2017年12月19日

 日本政府が巡航ミサイルの導入を決めたことをめぐって、いろいろな議論になっている。この問題は、よく整理して主張しないと、足を掬われることになると思う。

 専守防衛にも反対というなら、とくに難しくない。何でも反対したらいいのだから。  

 問題になるは、これが専守防衛に反するか反しないかという議論である。専守防衛について、政府は一貫してこう説明してきた。

 「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいいます。」

 一方、敵基地攻撃は、専守防衛に反しないものなら憲法上も問題ないというのが、これも政府の一貫した考え方である。そのもとになっているのは、鳩山一郎首相の1956年の答弁である。

 「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います」

 この答弁は、相手国からミサイル攻撃を受けていることが前提になっている。専守防衛の「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて」という要件を満たしている。また、「攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとる」というのだから、「態様も自衛のための必要最小限にとどめ」るという専守防衛の範囲内である。「他に手段がないと認められる限り」攻撃するというのは、外交上の努力では防げないときにということであって、これも自衛ということの重要な要素である。

 実際、そういう場面を想定してみてほしい。相手国の基地から次から次へとミサイルが発射され、日本に落ちてくるという場面である。そういう場合も、ミサイルが落ちてくるのをずっと甘受するのが専守防衛ということなら、誰もそれを支持することはないだろう。

 だから、そういう特殊な場合、敵基地を攻撃することは、理論的には専守防衛の範囲に入ることは認めなければならないと思う。実際に巡航ミサイルを配備するかどうかは別の問題だけれども。(続)