2018年4月17日

 午後2時から講談社の応接室で。現代ビジネスの主催です。午前10時から別件のインタビューが予定されていたのですが、それは新幹線に乗っている間に電話が来て延期されたので、いまは弊社の東京事務所で仕事中。

 年末に『改憲的護憲論』を出した時から、「護憲的改憲論」を掲げる伊勢崎さんとの間では「やろう」と盛り上がっていたんですが、ようやくですね。さて、どんな議論になるやら。

 私は伊勢崎さんの提起している問題はよく理解できるんです。一言で言えば、日本は実際問題として交戦する(=自衛権を発動する)ことを想定しておきながら、交戦にともなって生じる義務を果たすような法体系を持っていないということでしょう。民間人を殺傷したいした場合、それを裁くための法体系です。そしてそれは、9条2項で交戦権を否認していることが問題なのだということでしょう。

 自衛官が事件、事故を起こした時の法体系の問題は以前から指摘されていました。例えば1982年11月、浜松基地の航空祭でブルーインパルスが墜落し、お子さんにやけどを負わせるという重大事故が発生しました。パイロットは死亡したのですが、刑法上の業務過失傷害罪が適用されます。他に法体系がないからです。

 日本有事の際に民間人が殺傷されても同じようなことになるのだと思われます。一方、殺傷される民間人が外国人なら(民間の漁船を盾にして軍艦が押し寄せてきた場合、漁船の民間人をどうするのかという問題が生まれます)、国際人道法では問題になるのに、対応する日本の法体系は皆無ということでしょう。

 しかし、これは大きな矛盾なのです。だって、自衛官は国家の出動命令を受け、任務を果たすために交戦するのです。敵を殺傷することが任務になっている。その任務の遂行過程で民間人を殺傷した時、決められている交戦規定を守らないで発生した問題なら、当然、罪となるでしょう。しかし、交戦規定を守っているのに発生したのなら、「ちゃんと規定は守っていたね」ということで罪は問われないというのが、軍事の世界の決まりです。他方、殺傷したのが外国人だから裁かないということでは、世界から糾弾されることになります。

 そのあたりのことが、ずっと議論されないで来ました。ブルーインパルスの事故の時も、やけどを負わせたことは重大であっても、パイロットにとっては任務の遂行中の事故なのです。任務を遂行しているのに傷害罪に問われ、しかも、刑事罰を受けたからということで、叙勲の対象からも除外されました。日本有事の際、生命を賭して任務を遂行せよと言われている自衛官が、そういう法体系の下にあることは、やはり問題だと思います。

 私の立場は、そういう問題はそういう問題として議論しようということです。ここに9条2項を改正論議をかぶせるとややこしくなる。しかも憲法を改正しないとできないということになると、その矛盾をずっと引きずることになり、自衛官にとっても人道法の世界にとってもいいことではないと思うのです。

 その辺りを議論できればと思います。5月3日にアップされるのかな。