2018年7月4日

 まず画像をご覧あれ。伊勢崎賢治さんの『自衛隊の国際貢献は憲法9条で──国連平和維持軍を統括した男の結論』(2008年)です。

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 昨日取り上げた『我、自衛隊を愛す……』(2007年)の次はこの本と決めていました。『我、自衛隊を愛す……』は、専守防衛派を護憲派にという考えのもとでつくりましたが、そこでは、じゃあ護憲の立場からすると自衛隊はどんな場合も海外に出てはいけないのか、という問題が欠けていたからです。

 紛争地における国連の停戦監視の仕事は、紛争当事者から中立とみられる日本が大事な役割を果たせるし、非武装丸腰でやるので自衛隊が武力を行使するという問題が発生しないという伊勢崎さんの問題提起は、すごく新鮮でした。世界の紛争に関与しないというのではなく、日本が紛争を終わらせていくというわけですから、心が躍ったんですね。私の息子なども「絶対に伊勢崎ゼミに行く」ことをまず決め、それにあわせて志望する大学を選んだものです。

 この本の帯のウラですが、少し変でしょ。推薦ということで名前が出ているのは、自民、公明、民主の国会議員だけです。オモテのほうに、「護憲の本なのに、「改憲」「加憲」の政党の方からも推薦」とあるので、「ああ、そこをねらったのか」と思われるかもしれません。

 でも、最初は違ったんです。共産党と社民党にも参加してもらい、いわば全政党の国会議員が推薦するという野望を抱いたんです。そして、共産党は笠井亮さんが「いいね」と言ってくれて、社民党は福島瑞穂さんで決まっていました。

 ところが、笠井さんが党中央委員会の書記局にお伺いを出したところ、「ダメ」ということになったのです。憲法という基本的な問題で他の政党と同じ枠組みだと思われるのは適切ではない、というような理由でした。はあ、そうですか。

 いや、もちろん憲法問題で共産党と他の政党を同列に置こうなんて、少しも思っていませんでした。自衛隊の海外派遣体制がどんどん拡大していくなかで、日本の全政党の国会議員が、日本の役割は非武装丸腰の自衛隊派遣だねと議論するきっかけになれば、多少は意味があるかなと考えただけです。しかも、そういう提起に賛成だということでは共産党は乗れないだろうから、推薦文としては「9条論議に不可欠な紛争現場のことがわかる本だ」として、ハードルを下げたんですよ。

 でも、当時の共産党は、憲法問題でも他党と協力し合うという態度をとっていなかったし、そもそも無理だったのでしょうね。けれど、現在は憲法問題で立憲民主党と協力し合おうということになっているわけで、なぜその立憲で憲法調査会の事務局長という大役を担うことが最近決まった山尾さんが『9条「加憲」案への対抗軸を探る』の執筆者だからダメだというのか、よく理解できないわけです。

 帯のほうは、共産党だけを外してつくるという選択肢もあったのですが、そうすると「なぜ共産党だけいないの?」という疑問が私の愛する共産党に殺到すると困るだろうからということで、福島さんにはお詫びして、あたかも最初から改憲政党だけに見えるように装いました。笠井さんからは「これもいいね」と言ってもらいましたけど。(続)