2013年9月17日

 今月のはじめ、福島に行ってきたんです。直接には、来年3月に福島市で開催する企画の相談ですが、その機会にいろいろな方とお会いしてきました。

 そもそもどういう企画にするのかという点で、これが難しい。だって、福島で暮らす人びとの気持ちに合致していて、「これなら参加したい」となってもらわなければなりませんから。

 行く直前、汚染水問題が表面化していました。今年と昨年は、相馬市で企画を実施したのですが、相馬は漁港があり、関連の製造、流通の仕事をしていた方も多いところでした。まだ漁業の仕事はできないけれど、希望くらいはもちたいという気持ちになっていたときの汚染水問題ですから、関係者の落胆は容易に想像できます。「絶望」という言葉を使う方もいます。汚染水問題は騒がれていますが、われわれの批判というものが、そういう人びとのリアルな気持ちに合致したものになっているでしょうか。

 一方、来年は福島市ですから、ここで暮らしている子育て中の家族というテーマを避けて通ることはできません。そこを避けたら、開催する意味がありませんものね。

 ところが、実際にお話をしてみて、自分の認識の甘さや弱さを自覚させられました。なんだか、外から応援するとか元気づけるとか、そんな気持ちになっていたかもしれない。福島の人びとには、自分で考えて、自分で決定し、自分で立ち上がる力があるんですよね。そこを忘れてはならないと自戒しました。

 そういうことが分かるのも、原発事故以来、うちの会社がたくさんの関連書籍を出してきたことです。そこで福島の人びとともつながっていることです。

 たとえば最近も、『あの日からもずっと、福島・渡利で子育てしています』という本を出しました。佐藤秀樹さん、佐藤晃子さんというご夫婦が書かれた本です。

 このお二人は、原発事故直後に出した『福島は訴える』という本でも登場されています。まだ事故から半年という局面で、福島で子育てする問題をこれだけ本質的に捉えることのできる人はいないと思って、そのうち単著をと願っていたのですが、それが適いました。

 本を出したあと、「やっと自分たちの気持ちのことを書いた本が出た」と評判になっています。そうなんですよ。外からじゃなくて、自分たちで訴え、自分たちで変えていかなければなりません。今回も、このお二人から、そういうことをいろいろと教えていただきました。

 ということで、福島の企画も、そういう観点で準備していきます。協力してくださる方はたくさんいますので。それに、この企画、まだ公になっていないのだけど、ネット上のつながりで、「自分も出演したい(音楽が半分以上を占めるんです)」との声が広がっていますし。

 それにしても、福島でいろんな方とお話しして感じたのは、将来の総理大臣はみんな福島から出るのではないかということでした。だって、事故を経験したことによって、考えることの広さと深さが尋常ではないんです。これまで医療の専門家だった方も、放射線の影響はこうですよという話だけを患者にしても仕方なくなっていて、この地域をどう復興させるのかという展望も患者に語る必要が出ていて、すごい勉強をしています。要するに、総理大臣になったつもりで考えておられるようなものです。そういう人びととお会いすると、こちらが勉強になるので、これからも月一回、福島に行く予定です。