2014年5月23日

 いろんな仕事をしていることを理解してもらうためにも、また書いておきます。とっても面白い本ですし。

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 これ、共産党の国会議員を長くつとめた松本善明さんの自伝なんです。先週印刷が完了し、26日に取次に搬入されますので、早ければその日から本屋に並びます。先週末は、松本さんの米寿の会が東京であり、私も出席したんですが、出来上がった本がお披露目されました。

 一定の年配の方なら、共産党に関心はなくても、田中角栄の愛人問題の追及などで名をはせたので、ご存じではないでしょうか。絵本画家いわさきちひろの夫であることでも有名です。

 松本さん、タイトルにあるように、戦前、海軍兵学校に入っていたわけです。海軍兵学校といえば、当時、日本中からエリートが集まっていました。そういう時代だったんですね。そのなかには、しかし、政治的にもいろいろな傾向の生徒がいたのに、松本さんは天皇制を固く信じ切っていたのです。

 戦後、東大に入った松本さんは、共産党員になるのですが、戦前、騙された痛苦の経験があるものだから、党員になるのに悩み抜くんですね。再び騙されたということになってはいけないと。その苦悶と葛藤がすごく伝わってきます。まあ、中身は、手にとって読んでみてください。

 ネット上では、新日本出版社が断ったからうちで出すことになったという噂も駆け巡っています。他社の事情はまったく知りませんけれど、私は、私なりに出したい本だったんです。

 だって、誰もご存じないと思いますけど、私、松本さんの秘書をしていたんですよ。秘書といっても、国会対策だけをお手伝いするということだったし、半年だけだったので、地元の方にも知られていませんけどね。

 ちょうど自民党政権が倒れ、細川政権が誕生した頃です。予算委員会で、細川さんのいわゆる佐川急便疑惑が焦点になっていて、松本さん、理事会から帰ってくると、「自民党は本気で細川総理の首をとるつもりだ。きっとそうなるぞ」と報告されていました。

 私は、こんな程度の問題で、まさか総理大臣が辞任しないだろうと思っていたんですよね。ところが、あっさりと辞任。何と言っていいかわかりませんが、理事会のような政治闘争の最前線にいて、長年の経験があると、そういうことが見抜けるんですね。すごい政治家だなあと思いました。その話も、この本のなかには書かれています。

 ということで、是非、読んでくださいね。ご注文はこちらから。

2014年5月22日

 昨夜はありがとうございました。ぎゅうぎゅうにならない程度に一杯になって、ちょうど良かった感じでしょうか。東京や神奈川からも来ていただき、恐縮です。

 さすがに、本を書き上げた直後の大事な講演会だったので、かなり疲れ気味です。日曜日は女性ばかり80名ほどが集まる学習会も予定されています。その上、昨日、講演に呼ばれればどこでも行きますと宣言しちゃったもので、どうなっていくんでしょうかね。

 終わった後、東京から来た方と飲んでいたんですが、憲法問題の勝負所で主体的に闘っているわけで、人生をかけてやれてますよねと言われました。まあ、そうかもしれませんが、体を壊したら闘えないので、ほどほどにやっていきます。

 それに、このブログを見ていると、1日のほとんどを憲法のことを考えて仕事していると思われるかもしれませんが、そんなことはあり得ないんです。だって、小さな出版社の編集長ですから、会社が傾くと困るし、編集部員の仕事をサポートするだけでなく、自分でも年に20冊程度の本を編集します。

 今週は、月曜日に自分の本を校了したんですが、明日、大事な本を印刷所に入れます。『あなたの福島原発訴訟』です。サブタイトルは、「みんなして「生業を返せ、地域を返せ!」。

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 福島原発事故にかかわる裁判は何種類もありますが、これは原告が3000名程度もいるという、最大規模の裁判になっています。多くの方に原告になってもらうことにより、世論の力をつくり、闘いを進めようというわけです。

 だから、本を手にした方が、「自分も原告になろう」「支援者になろう」と思えるように、いろいろ工夫をしたつもりです。タイトルもそうですが、弁護団に親しみを持ってもらうことも不可欠なので、顔写真ではなくイラストを使ったりしています。

 この裁判の大事なところは、原告が「自分たちだけを救ってほしい」という要求はしていないことです。そうではなく、「あらゆる被害者を救済してほしい」、「そのための制度をつくってほしい」というのが、裁判の眼目なんです。そういうことをするためには、1万人くらいの原告が必要だということで、みなさんがんばっておられる。

 そのために本をつくろうということが原告団、弁護団で話題になったとき、「この本を出すならかもがわ出版しかないよね」ということになったそうなんです。3.11以来、福島にかかわって良質の本を出し続けてきたという誇りがあるので、とってもうれしかったです。1万人の原告団づくりのお手伝いができればと思います。

2014年5月21日

 本を書き終わって、少し脱力感があるけれど、そんなこと言ってられないよね。与党協議はどんどん進んでいくし、今夜は講演会だし。

 与党協議が、グレーゾーン、PKO、集団的自衛権の三つの分野に分かれ、その順序で進められるのは順当なところだろうと思う。もともと性格の異なるものなのだから。

 どれにも自衛隊をどう使うかという問題が絡み、武器使用の問題にもつながっている。そこに目がいってしまって、どれにも自衛隊が武器を使うことだから等しく反対ということになってしまうと、「なんでも反対」というように写ってしまう。

 もちろん、どれにも反対でいいんだが、その論立てとか、反対の強度とかは、違ったものでないと、説得力に欠けることになると思う。公明党が三つに分けることを求めたのには、それなりの道理があるのだと感じる。

 グレーゾーンは日本防衛の課題である。しかも、中国の尖閣問題での挑発とか、潜水艦問題とか、北朝鮮の横暴とか、国民が現実に不安を感じる分野に属している。だから、それぞれの問題で、国民が「そういうものなら安心だ」というものを打ち出せないとだめだろう。

 PKOは集団安全保障の課題だ。憲法制定議会において、当時の政府は、憲法九条のもとで、日本の安全は国連の集団安全保障に頼ることを宣言していた。だから、集団安全保障をどう捉え、どう強化していくのかは、誰よりも日本が当事者として考えなければならない問題である。武力を使う問題だから日本にとっては人ごとだという認識では、この問題での道理を欠くことになる。

 焦点となっている「駆けつけ警護」のことを考えても、遠くにいるか近くにいるかは別にして、NGOとかが襲撃されているとき、それを黙ってみていろというのは、自衛隊員にとっては酷な選択だと感じる。だから、そういう自衛隊員でも納得してもらうには、どういう問題の立て方をしたらいいのか、よくよく考えるべきことだ。

 一方、集団的自衛権は、歴史の実態からみれば、侵略と介入のために武力を行使してきたということで、日本がそれに参加することには躊躇せず反対でいいわけだ。だけど、その実態を隠すため、安倍さんが記者会見でやったように、いろいろなごまかしをしてくる。それをどう暴くのかが、この問題の課題であろう。

 石破さんは、この三つをセットにして与党協議の結論を得るみたいなことを言っている。しかし、これはセットにできるようなものでないことを、とりあえず口を大にして言っていかねばならないだろうね。

2014年5月20日

 明日、このテーマで講演します。午後6時半から(6時開場)、場所は京都社会福祉会館(二条城北)、参加費は500円(資料代)です。以下、明日のレジメ。

一、解釈改憲のために日本防衛をもてあそぶ安倍首相
 1、アメリカ本土へ向かうミサイルの撃破をめぐって
 2、首相会見で出た日本人を乗せた米艦船防護をめぐって
 3、グレーゾーン事態をめぐって

二、侵略を自衛と描いて軍事行動を正当化する安倍首相
 1、「侵略か自衛かは国によって見方が違う」発言の意味
 2、侵略か自衛かが国によって異なる集団的自衛権の実例
 3、「安保法制懇」はそれを検証せず、同じ過ちをくり返すか

三、日米中の関係をどう構築するのか
 1、オバマ大統領の「支持」表明をどう見るか
 2、アメリカを尖閣防衛に巻き込むという見方について
 3、新時代の日米中関係はどうあるべきか

四、この闘いの対決構造を理解することがカギになる
 1、国民世論の現状と政治の現場の変化の意味をつかむ
 2、「特殊な軍事路線」VS「まじめな防衛+外交一筋」
 3、専守防衛という考え方への理解が必要となっている
 4、防衛政策という分野への踏み込みが求められている

2014年5月19日

 最終的に、こういうタイトルの本になりました。「安保法制懇」報告の全文(注記も含め)と安倍さんの記者会見も収録しています。昨日書き終わり、牛のように寝ていました。目次だけ紹介しておきます。A4判144頁(本文2色)、1400円+税です。よろしくお願いします。

はじめに
論点1 集団的自衛権という言葉は聞き慣れないが、そもそもどんな権利なのか
論点2 友だちが殴られていたら助けるのだから、武力攻撃された国を助けるのも当然か
論点3 これまでなぜ違憲とされてきたのか、それがどういう理由で合憲になるのか
論点4 なぜ日本政府は日本への武力攻撃に反撃する武力行使だけを合憲としてきたのか
論点5 戦争する国に対して財政支援を行うのも集団的自衛権の行使にあたるのか
論点6 「武力の行使」とは、いわゆる戦闘行為というものと同じだと言えるのか
論点7 「武力の行使」というと、後方支援は含まれないように思えるが、どうか
論点8 基地の提供も武力行使なら、日本はすでに集団的自衛権を行使しているのか
論点9 「報告書」に出てくる集団安全保障という考え方とは同じものなのか
論点10 日本は憲法九条があるため個別的自衛権さえ制約されているというのは本当か
論点11 「安保法制懇」には憲法に関する重大問題を提起する資格があるのか
論点12 保有していながら行使できない権利などあり得ないのではないか
論点13 内閣法制局の憲法解釈に対する批判がされているが、そもそもどんな機構なのか
論点14 憲法に関する解釈が変わることは当然あり得ると考えるべきではないか
論点15 文民条項のように政府自身が憲法解釈を変えた実績もあるが、どう考えるか
論点16 日本の平和と安全に関わる事態に限定するなら当然だと言えるか
論点17 「自衛」と言いながら「侵略」行為を行うなど、とうてい信じられないが
論点18 なぜ集団的自衛権は侵略や介入のために濫用されることになったのか
論点19 冷戦後は集団的自衛権の発動のあり方が大きく変化したと聞いたがどうなのか
論点20 砂川事件の最高裁判決で認められた必要最小限度の自衛権は適用できるか
論点21 公海上の米艦船が攻撃され、援護しないと次は日本が攻撃される場合はどうするか
論点22 どういう場合も米艦船を防衛するための武力行使ができると考えるべきか
論点23 アメリカ本土に向かうミサイルを自衛隊が撃ち落とすのは当然ではないか
論点24 グアムに飛んでいくミサイルなら、日本周辺を通過するので迎撃可能ではないか
論点25 なぜ自衛権で可能な米艦船防衛や技術的に不可能なミサイル迎撃を持ちだすのか
論点26 現行の周辺事態法では朝鮮半島有事の際、前線で米軍支援ができないから問題か
論点27 朝鮮半島有事の際、船舶の臨検を北朝鮮の領海でもやれるようにすべきか
論点28 朝鮮半島有事に韓国から避難する日本人を乗せた米艦船を守るために必要か
論点29 武装集団が離島を占拠し、不法に活動するなどのグレーゾーン事態をどう考えるか
論点30 領海内で潜行している潜水艦が退去命令に応じないときにどうすべきか
論点31 海外で日本人が人質にされたりする際、自衛隊が救出できるようにすべきか
論点32 中国の南シナ海における横暴もあり、フィリピンなどを助けるためにも必要か
論点33 日本の生命線である石油輸入のため、ペルシャ湾で敷設される機雷の除去をすべきか
論点34 サイバー攻撃に対して自衛権を発動するということがあり得るのか
論点35 国会の同意はじめ六つもの条件をクリアーしなければならないので問題ないか
論点36 憲法九条一項にある「国際紛争」を日本が当事者の紛争と解釈するのは妥当か
論点37 国連安保理決議にもとづく軍事活動に日本が関与しないのは不適切か
論点38 湾岸戦争型の多国籍軍のような場合は日本も協力すべきだと言えるか
論点39 PKOへの自衛隊派遣に際してよく問題になる「駆けつけ警護」をどう考えるか
論点40 国際紛争を解決するにあたって日本が果たすべき役割はどこにあるのか
論点41 海外で人を殺さないという原則を貫くためにはどんな仕事があるのか
論点42 国連憲章に明記された考え方であるし、世界が受け容れていると言えるのか
論点43 八六年の国際司法裁判所の判決は集団的自衛権を認めたものではないのか
論点44 日本の国際法学会において集団的自衛権はどう捉えられてきたのか
論点45 「安保法制懇」の佐瀬氏は日本の国際法学会を「奇異」だと批判しているが
論点46 核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対抗するためにも集団的自衛権が必要か
論点47 アメリカは日本を守る義務があるが日本にはないという関係を変えるべきか
論点48 安保条約締結当時から大きく変化した日本周辺の戦略環境に合わせるべきか
論点49 アメリカを尖閣問題に巻き込むためにも米艦船防衛義務を打ち出すべきか
論点50 どんどん軍事的に強大化していく中国と対抗するためには必要なことは何か
おわりに 相手国の領土、領海、領空に自衛隊が行かなければ心配しないでいいか
資料1 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書
資料2 「安保法制懇」報告を受けた政府の「基本的方向性」に関する安倍首相の記者会見における冒頭発言