2014年9月25日

 報道されているように、シリア領内の「イスラム国」爆撃について、アメリカは国連憲章51条の「自衛権」であると主張している。個別的、集団的の両方ということだろう。

 日本政府は、これを支持するというのではなく、「理解」を表明するにとどめている。これは国際法上、自衛権を持ち出すのには無理があるという判断だと思われる。当然だよね。

 自衛権ということになると、いずれにせよ、どこかの国がイスラム国により「武力攻撃」を受けていることが条件になる。いうまでもなく憲章51条は、「国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、……個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」というものだからね。アメリカは、シリアが個別的自衛権で反撃し、アメリカなどが集団的自衛権で援助していると言いたいのだろう。

 だけど、そもそも論になるけど、シリアはイスラム国から武力攻撃を受けていると言えるのか。まあ、国土のかなりの部分を奪われているわけだから、まったくそう言えないとまではいえないだろう。

 だけど、そういうことになると、どこかに独裁政権があるとして、国民のなかに解放闘争が広がって、国土の一部に支配権を及ぼすという場合はどうなのだという問題が生じる。いわゆる内戦状態だ。

 そういう場合も、通常は、内政不干渉が原則である。内戦が広がって、他国にまで武力紛争の余波が広がるようになれば別の考え方もできるだろうけど、基本は内政不干渉。

 だって、こんなことを許していたら、内戦が起こったときに、好き勝手に他国が「集団的自衛権で助けに行く」と宣言し、内戦に介入することができるようになる。実際、戦後の集団的自衛権はそういうものとして使われてきた。

 そういう歴史があるから、1986年、国際司法裁判所は、集団的自衛権を発動する場合には、あらかじめ武力攻撃を受けた国が「自分が攻撃された」ことを宣言し、他国に援助要請を表明するという条件を課したわけである。ところが今回、シリアがそういう表明をしたわけではない。

 まあ、抗議もしていないから、政権維持のためには容認するということだろう。実際、今回はイスラム国が主体だから、純粋に「国民の解放闘争」とは言えないしね。

 だけど、解放闘争の抑圧という要素は、今後、大問題になってくるだろう。今回、中東諸国のいくつかがアメリカといっしょに攻撃に加わっているが、それも自分の国で解放闘争が起きてくることを心配しているからである。そのたびにアメリカは、自衛権だと称して空爆していくのだろうか。

 対テロ戦争が問題になり、タリバン政権が打倒されて以降、戦争するたびにテロリストは強大化し、活動範囲を広げてきた。アフガニスタン国内では国土の7割ほどを実効支配におき、隣のパキスタンではアルカイダと結んで凶悪化したパキスタンタリバンが勢力をつよめ、それがイスラム国としてシリアやイラクに影響を及ぼしているわけである。

 オバマさんのやり方は、テロ勢力を強大化させてきたこれまでの教訓から何も引き出していない。数年後、中東と世界はどうなっているのだろう。