2016年10月7日

 2日前、「年末年始の解散は、ない」とアップしたけど、それは解散時期を予測したくて書いたわけじゃない。そんなことはジャーナリズムに任せておく。心は、最後の文章にあった。

 「ということで、野党には、枠組み先行ではなく、時間がかかってもいいから、真剣に政策協議を進めてほしい。安全保障政策も忘れずにね。」

 東京と福岡の補選も、時間がないということで政策協議も行われず、中身の薄い共闘になった。年末年始の解散論は、同じような構図をつくりだす危険がある。そこを指摘したかったわけである。

 現在の民進党の本流は、この補選方式をねらっているだろう。一方、共産党は相互支援方式を提案していて、建前としては得票率に応じて候補者を統一するというものになると思われる。300近い小選挙区を2対1で分けるというもの。ただそれも建前であって、実際には民進党が退けば共産党に勝機が見える京都1区など、限定的なものにしてもいいというのが本音だと推測する。

 しかし、そういう枠組みだけの議論をやっていて、政策協議がないと、中身のある共闘ができない。政権をともにするほどの政策的な一致はないが、選挙に勝つためには共闘するという程度だと、たとえ勝利して政権につながったとしても、中身のある政権ができないし、それ以前に何のために共闘しているのかが見えないので、選挙に力も入らない。

 新安保法制の成立直後なら、「それを廃止しよう」ということだけで力が入っただろうけど、ずいぶんと時間が経っているので、それだけでは難しい。選挙共闘して何を実現するか、その政策協議が先行しないとダメだろうね。

 自民党、公明党から解散論が出ているのは、案外、そういう思惑があるからかも。解散をあおって、野党に政策協議をさせないまま共闘させようという感じかな。実際の野党協議も、それに乗っかかっているように見える。時間がないからとにかく候補者の一本化という感じ。

 さて、福島の本のメドも経ったし、今回の出張はずいぶんと成果があった。メールのやり取りだけで、「歴史基礎」の提言を出した学術会議の先生ともお会いすることになった。学生運動のつながりが、いまになって役に立っている。では、来週。

2016年10月6日

 昨日夕方、学校図書館向けの本のプロダクションで打合せをした。その後、そのまま懇親会。

 そこで何の拍子だったか忘れたが、「道徳」のことが話題に。その時、パッとひらめいてしまったのだ。

 そう、学校で使う「道徳」の本をつくろう。教科書になったらベストだが、それはさすがに難しいかもしれない。その場合、副教材とか参考書とか、まあ学校図書館向けでも構わない。

 それを口にしたら、まわりのみんなが、「まさか、かもがわがそんな本を出したら、左翼の先生からバッシングにさらされるでしょ」と言われた。それはどうだろうけれど、でも、うちが出さなきゃいけないでしょ。

 「心のノート」に代表されるように、道徳の教材って、たしかに左翼から批判されるよね。うちが出しても似たようなことはあるだろう。

 だけど、じゃあ、道徳って、学校で教えないのでいいのか。そんなことはないだろう。

 批判するということは、その批判者にとっても、「道徳教育はこうあるべき」という基準があって、その基準に沿わないから批判しているはずだ。まさか、何でも批判するとか、基準もなしに批判しているわけではあるまい。

 そうならば、そういう人は、道徳教科書が書けるだろう。そうでないとおかしい。

 それで、その場で、昔、田中角栄首相が「5つの大切」だったか(正確には忘れたけど)、道徳教育の重要性と中身を説いた際、共産党が10だったか20だったか(これも忘れたけど)、学校で教えるべき徳目の内容を提言した話を紹介した。みんなびっくりしていた。

 野党が政権をとったら、否応なくそのことが問われるよね。文科相になんかなったら、自民党の集中砲火だ。

 戦争法廃止だけが一致点なのだからといって、そこから逃れるわけにはいかない。たとえ衆議院で多数を占めて野党の政権ができたとしても、次の参議院選挙でも多数にならないと、法案は廃止できない。ということは、2年程度は政権が続くわけだ。

 その間、教科書の検定はある。予算もいっしょに組む。辺野古の問題もある。思いやり予算の延長も焦点となる。尖閣周辺に中国の軍隊がやってくるかもしれない。

 だから、本当に政権を取りに行く気持ちがあるなら、広範囲で政策協議が必要なのだ。って、道徳と違う話になっちゃった。

 道徳の本、かならず出しますね。かもがわ出版がそういう本を出したということで話題にするような本。

 ズレたテーマだけど、本気で野党政権を望んでいる人は、蓮舫内閣の大臣になったつもりで、閣内不一致を生み出さないという原則を守ったとして、自分はあらゆる問題で何ができるのかを考え、行動する必要があるでしょうね。

2016年10月5日

 前回総選挙から年末で2年経つから、一般的には何でもあり得る。野党に対する牽制をしたいという思惑から、いろいろ言う人もいるだろう。

 だけど、年末年始はない。12月の山口会談で成果を出して解散というシナリオが前提になっているだけに、それはない。

 だって、北方領土問題で何らかの前進、合意があるとすると、2島先行返還というものしかない。本日の朝日新聞でロシアの元駐日大使が書いているが、歯舞と色丹は返還を前提としてその条件協議を開始し、国後と択捉は帰属問題を継続協議するというやり方しかない。その合意をもって最終的な平和条約となるのか、あるいはそこへ向かう中間的な性格の条約となるかは難しいが、やり方はそれしかない。

 私自身は、もしそれで合意できるとすると、安倍さんを高く評価する立場だ。シベリア鉄道を北海道まで延伸するとか、いろいろな経済案件が出ていることも含め、「よくやった」と言ってあげたい。

 だけど、4島一括しかないと言われ続けてきた日本国民がどう思うかは、まったく別である。いま紹介したロシア大使の主張する内容は、鈴木宗男氏などが模索したものだが、それに対して政治の世界でははげしいバッシングが浴びせかけられた。共産党までがそれに加わった。

 だから、この案が国民の支持を得るとすると、現段階で、それを容認するための世論づくりが不可欠だろう。ロシアとの関係を考えれば2島だけでも仕方ないよねという世論を醸成した上で、残りの2島もすぐには帰らないけれど可能性を残したという結果が出たとき、「安倍さんはスゴイ」と思わせるように持っていくしかない。

 だけど、そういう動きは、私には見えない。まったく見えない。

 衆議院も参議院も3分の2を確保したわけだが、自民党の幹部のなかで、次も3分の2を獲得することが簡単だと思っている人はいないと思う。参議院は1人区で2対1という結果だったが、300近い衆議院の1人区で同じ結果が出たとして、ようやく3分の2ということになる。

 それに加えて、衆議院でも比例代表部分があるのだ。いまの力関係、勢いであっても、そこで3分の2は取れない。となると、全体でも3分の2には達しない。

 日ロ首脳会談の結果を国民のほとんどが褒め称えるなら、達するような状況もあるだろう。だけど、これまでの世論工作が聞いていて、どんなに頑張ってもそこまでにはならないと思う。

 ということで、野党には、枠組み先行ではなく、時間がかかってもいいから、真剣に政策協議を進めてほしい。安全保障政策も忘れずにね。

2016年10月4日

 台風のため、本日の夜に移動しようかと思いましたが、明日の朝でも大丈夫そうですね。ということで、明日からは、時間刻みのスケジュールです。

 明日は、午後1時過ぎに東京事務所に到着し、いろいろな雑務。2時からは、工藤晃さんの本『マルクス「資本論」の見地で21世紀の資本主義を考える』の編集会議です。いよいよ大詰めを迎えていて、気が抜けません。

 午後4時にはJR国立駅へ。隣接の喫茶店で、一橋大学の名誉教授をしておられる哲学の先生とお会いします。私も、この大学で、いちおう哲学のゼミに籍を置いていたんですよ。あくまで「いちおう」ですが。仕事は中国の哲学者の翻訳本を出すこと。さて、どうなることやら。

 午後5時は、近くにある学校図書館向けの本のプロダクションにお邪魔します。先日、講座「世界と日本の歴史」の話を書きましたが、もともと高校教科書に世界史と日本史の区別がなくなるという話なので、じゃあ学校図書館向けの本はどうなるのだろうというご相談です。夜、遅くなりそうです。

 翌日午前は東京事務所の会議。いつも詰めた議論になるので、おそらく午後2時頃までかかります。

 それが終わったら福島へ。いつもの「生業訴訟」関係の仕事と、もう一つです。

 「生業訴訟」は、来年3月の結審に向け、国と東電の責任を明らかにするため、さらに頑張り度が強まっています。今回の裁判の日の講演会は、仲里利信衆議院議員をお迎えします。言わずと知れた、元自民党県会議長ですよね。仲里さんは、午前中にいわき市に入り、弁護団の案内で、浪江町などを通って北上し、福島市に入られます。その仲里さんをお迎えし、夜、翌日の裁判の見通しなどをマスコミの記者に説明する会があるので、お連れするのです。

 同時に私は、あるお医者さんに会いに行きます。『広島の被爆と福島の被曝』という本をどうしても書いてもらいたいという「説得活動」です。

 それで、その翌日、生業訴訟の本番です。朝から裁判があって、昼休みに裁判所前の集会、デモ行進があり、仲里さんの講演会に突入するんです。レジメを見せていただきましたが、沖縄の闘いがリアルに語られるでしょう。福島と沖縄の連帯へ、大きな一歩です。

 この講演会、結審に向けて、元総理大臣の登場も予定しています。頑張らなくちゃ。頑張りすぎて倒れないようにしないとね。

2016年10月3日

 11月に弊社から出すことになりました。「南スーダン、南シナ海、北朝鮮──新安保法制発動の焦点」です。いま急ピッチで作業中で、先ほど「まえがき」を書いたので、以下、ご紹介します。

southsudan0906

 現在、二〇一五年九月に国会で成立した新安保法制にもとづき、南スーダンPKOに派遣されている自衛隊に「駆けつけ警護」の任務が付与されることが話題になっています。新安保法制が果たして日本と世界の平和に寄与するのか、それとも逆行するものになるのかが、現実の事態の進展によって明らかにされようとしているのです。

 本書は、その南スーダンをはじめ、自衛隊による警戒監視が想定されている南シナ海、核・ミサイル開発が進む北朝鮮と、新安保法制が発動される焦点となる問題を取り上げています。陸将や海将を経験した元自衛官、安全保障に携わってきた防衛省幹部や研究者、世界の各地で紛争処理を手がけてきた実務家、ジャーナリストや国際ボランティアなど、多方面の専門家がそれぞれの立場から論じたものです。

 自衛隊を活かす会(正式名称は「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」)は、一四年六月に発足しました。その基本的な目的は、自衛隊を否定するのではなく、かといって国防軍や集団的自衛権に走るのでもなく、現行憲法のもとで生まれた自衛隊の可能性を探り、活かしていくことにあります。その目的を達成するため、一四年から一五年春にかけて五回のシンポジウムを開催し、一五年五月、「変貌する安全保障環境における『専守防衛』と自衛隊の役割」と題する「提言」を発表しました(講談社新書『新・自衛隊論』所収、ホームページ〈http://kenpou-jieitai.jp/index.html〉でも閲覧可)。

 「提言」は、二一世紀の世界における日本のあり方を論じたうえで、日本の防衛の基本的な考え方と国際秩序構築のため、自衛隊が果たすべき役割を示しています。そして、「このようなあり方は、現行憲法のもとで可能だというだけでなく、憲法前文と九条の平和主義の立場に立ってこそ」実現することを明確にしており、安倍政権が進んでいる方向とは異なる選択肢を提示するものだと自負しています。多くの方に読んでいただき、議論を巻き起こしたいと考えます。

 自衛隊を活かす会は、このような活動と並行し、新安保法制の成立直後から今年(二〇一六年)まで、その発動の焦点となる問題をテーマにして、何回かのシンポジウムを開催してきました。本書は、そこに参加された方の報告をもとにして、その後の事態の進展などもふまえ、加筆・整理していただいたものです。

 新安保法制をめぐっては、国会のなかでも国民のなかでも、かつてない議論が巻き起こり、市民運動と政治のあり方を変えるような局面も生まれました。この新安保法制の評価は、これまでは法律の条文をめぐって議論されてきましたが、今後はまさに法律が実施される現実をめぐる議論に移行していきます。本書の執筆者は、いずれもその分野の専門家であるというだけでなく、実際に政治や防衛などの現場で実務に携わった方々であって、本書も現実に立脚した考え方を読者に提供するものになっていると思います。多くの方に手にとっていただき、この議論を有益なものにする議論に加わってほしいと考えます。

二〇一六年一〇月 自衛隊を活かす会事務局長 松竹伸幸