2017年4月11日

 今週末、「日本会議」について2回の講演をすることはお伝えした。そのうちの一つは、「日本における保守化・右傾化の構造」を研究している学者のグループである。

 ということで、本日から、そこでお話しする中身をつらつらと考えなければならなくなった。まあ、いまさら新しい文献にあたっても消化しきれず、中途半端なものになるので、いまの自分の到達点をどう整理し、何を主張するのかということになるだろう。

 ところで、その問題をお話ししようとすると、日本は「右傾化」しているのかという、その前提をどう見るかという問題を避けて通れない。日本に限らず世界的な右傾化が見られるというのが、いまの大方の見方だと思うが、それはどうなんだろうか。

 一昨年、『慰安婦問題をこれで終わらせる。』(小学館)という本を出したあと、小林よしのりさんと「週刊東洋経済」で対談させていただいた。当時、私は本気で慰安婦問題での何らかの日韓合意が必要だと考えていたのだが、そのためには日本の右派も左派も大枠で受け入れられるものにしないと、何をつくっても世論の気持ちが終わらないので、問題も終わらないと考えていた。

 そこで、NHKの知っている人に持ちかけたのだ。小林よしのりさんと私が韓国に行き、慰安婦の方々を訪ね歩き、心を通わせあうような企画は成立しないのだろうかという相談だった。当時は年末に日韓政府合意が達成されるなど誰も想像していない段階だった。それがテレビで流れたら、右も左もこの問題の解決を願っていることが世に知られ、政治を動かす効果があるのではないかと期待したのである。

 ところが、そのNHKの方は、「自分は面白いと思うが、その企画は現在のNHKでは通らない」というものだった。びっくりしたのは、その理由である。「いまの小林よしのりさんはNHKにとっては左の人になっている。左と左が一緒に旅するというのでは問題外だ」ということだったのである。

 なるほどなと思った。いまのNHKにとって、安倍政権を批判する人は、それだけで左なのだ。

 だから、その話は日の目を見ずに終わったのだけれど、右傾化という問題を考える上で、一つの材料にはなる。NHKもそこまで右によったかという視点で見ると、右傾化がメディアを覆い尽くしているという話になる。他方、小林よしのりさんも左だということになると、右と思われていた人の相当部分は実は左だということになる。

 要するに、見方の問題という要素があるわけだ。そこをどう捉えるか、よく考えてお話ししなければならないよね。