2017年4月24日

 こちら側の武力行使が、先制攻撃されたときの自衛に限られるとなれば、その最初のミサイルが着弾することを前提としており、日本が被害を受けることになるではないかという批判が寄せられよう。しかし、それ以外の手段は創造できないほどの大規模な厄災を招くのであって、自衛に限るやり方こそが被害を最小化する考え方である。

 例えば、北朝鮮のミサイル基地を一挙に叩けばいいのだと、威勢のいいことを言う人もいる。けれども、テレビに映るミサイルの発射場面やアメリカの軍事衛星の写真を見ると、基地がどこにあるか分かっているような錯覚におちいるが、発射台がどこにあるのかすべて分かっているわけではない。例え分かったとしても、移動式の場合は、予想を超えたところから発射されることになる。しかも、すべての基地をを一挙に完全に叩くことができなければ、残りのミサイルが日本と韓国に(アメリカではなく)飛んでくることになるのである。

 北朝鮮は、ノドン200発とスカッドER100発、計300発程度のミサイルを保有していると考えられている。最初の一撃で半分を破壊したとしても、なお150発のミサイルが残るのだ。北朝鮮がその報復として、化学兵器を搭載したミサイルを東京に向けてきたらどうするのかという想定抜きに、敵基地の先制攻撃論を語ってはならない。一方、自衛の場合に限って対応する場合は、発射した場所が特定されるのであって、破壊できる確実性もはるかに増すことになる。

 いや、敵基地を攻撃するというのは、あくまで威嚇であって、抑止するためだという人もいるだろう。確かに、怖いから手を出さないでおこうと北朝鮮が認識すれば、暴発はしないかもしれない。しかしこの間、北朝鮮はそういうことにお構いなく、核・ミサイル開発を加速させてきたではないか。抑止力というのは、結局、相手の意思をくじこうとするものだから、くじけない相手には効かないのである。

 結論は明白だ。軍事と外交の適切な結合しかない。北朝鮮が先制攻撃するなら、こちらは自衛の範囲で対応することを明確にし、その意図を北朝鮮に伝える。同時に、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄するなら、体制を転覆するようなことはしないという立場で、あらゆる外交努力を強める。簡単なことではないが、現状での「最適解」はそこにしか存在しないのではなかろうか。(続)