2017年4月25日

 なお最後に、中国が果たすべき役割について触れておく。日本やアメリカは、中国に役割を果たさせるため何をすべきかという問題も含めてだ。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を止めさせる上で、中国の役割が大きいと言われる。いくら国連が経済制裁を決めても、北朝鮮の輸出入の相手国がほとんど中国だけという現状では、中国が本気にならなければ効果は薄いものになるのは事実だろう。

 ただ、中国に本格的に経済制裁をやれというためには、中国が被る損失を誰がかぶるのかという問題を避けては通れない。日本やアメリカは、自分でそこをかぶる覚悟があるのかということだ。

 中国は現在、本来は受け入れるべき政治難民にあたる脱北者さえ、捕まえては北朝鮮に戻しており、国際社会から批判を受けている。経済制裁が効いてくることになると、経済的に困窮した大量の難民が中国に逃れでてくるのは目に見えている。その対策を中国任せにするという態度では、中国を本気にさせることはできない。日本やアメリカは、そこまで考え抜いて、経済制裁の実施を提唱すべきだろう。自分たちも費用を分担したり、難民を受け入れるのかということだ。

 同時に、中国を本気にさせようとしたら、現在のような先制攻撃路線は百害あって一利なしだ。中国は、制裁が北朝鮮の体制崩壊につながることを心配していると言われるが、何が一番の心配事かといえば、在韓米軍の緩衝地帯がなくなることである。朝鮮半島が統一されれば、米軍の駐留を受け入れる国家が目の前に立ち現れることなのだ。軍事的な選択肢で北朝鮮が崩壊するようなことになれば、それを遂行した軍隊がそのまま占領し、継続して駐留するようになるであろうことは、容易に推測できることである。

 これを逆の角度から見ると、中国を本気にさせることができるとすれば、経済制裁の結果として北朝鮮が崩壊するようなことがあっても、その際は韓国から米軍が撤退すると分かった時だけだろう。アメリカにその気はあるのだろうか。中国を本気にさせるというが、問われているのは、アメリカの本気度のように思える。
(了)

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 全体は、いつもの産経新聞デジタルiRONNAでした。「北朝鮮有事の「最悪シナリオ」に日本が取るべき選択肢は一つしかない」というタイトルで載っています。