2017年7月18日

 劉暁波さんの死が大きな問題になっている。外国での治療を望んでいたのに中国が邪魔をしたと報道されていて、当初、少し違和感があったのだ。天安門事件のあとに出国した活動家と異なり、劉さんはあくまで中国にとどまることによって、自分は苦しむけれど中国への愛を貫きとおすものだと思っていたからだ。

 だけど、昨日の朝日新聞を見て、納得した。劉さんを支えて国内で一緒にがんばってきた奥さんの精神状態が深刻となり、その奥さんの希望を叶えるため海外行きを望んだらしい。自分の信念を変えるとしたら、そういう場合だということだよね。偉いなあ。

 中国政府は、ネットを自由に操ったり、お墓に埋葬させないことで、劉さんの影響力を断ちきりたいと考えているのだろう。でも、劉さんの振る舞いは、中国のやり方の非道さをもっとも目に見えるかたちで示すためには、最善のものだったと考える。その思いはいつか結実するだろう。

 てなことを週末に考えていたら、ちょっとした事件が起きた。現在、中国のある出版社との間で、弊社が出しているマルクスに関係した本を中国語で翻訳・出版する話が進んでいて、契約書のやり取りが進んでいた。ところが、何日経っても、何週間経っても、それが相手に届かないのだ。

 そうしたら、相手の担当者が言うには、マルクスに関係する本だから当局が警戒して、没収されたかもしれないだって。そうか、中国でマルクスは警戒の対象なのか。少なくとも出版社が当局のことをそうみなしているということだ。

 その話を週末、某大新聞社の編集幹部に伝えたら、大受け。「中国共産党が一番警戒しているのはプロレタリア革命が起きることかもしれない」だって。

 そうだよね。客観的に見ると、中国って、政治的には封建制で、経済的には資本主義だ(イデオロギー的には共産主義と言いたいところだが、そんなことを言うと独裁も共産主義と言うのと同じなので言わない)。普通だったら、政治的に次に来るのは自由を求めるブルジョア革命だが、それを担うブルジョアジーは封建政治に庇護されることで、経済面での資本主義によってばく大な利益をあげている。

 だから、中国で起きるとすると、政治的には自由を、経済的には資本主義の規制を求める革命である。それを担うのは、やはり抑圧されているプロレタリアートということになるんだろうな。