2014年7月3日

 3年ほど前から、学校図書館向けに本をつくり始めました。最初につくったものが学校図書館出版賞を受賞したりして、少し注目されているんですよ。今年は憲法の本です。これから山のようにこのテーマの本が出てくるでしょうし、我が社としては、ただ客観性を売りにするようなことは止めて、憲法のここがすごいんだということが分かるようにしたいと思います。こんな感じの「まえがき」なんですが、いかがでしょうか。

 「憲法」と言われても、みなさんにとって、あまりピンと来ないかもしれません。でも、日本の憲法って、とっても優れているんですよ。

 たとえば、私たち一人ひとりに国をつくる権利がある(国民主権)という立場を明確にするとともに、その国民が選ぶ国会を「最高機関」と位置づけるなど、国民主権を国のあり方に貫いています。憲法とは国民の人権を守るためにあるというのが世界の常識ですが、日本の憲法ほど詳しく、深く人権のことを書いている憲法は他の国にありません。また、「平和憲法」という名前で呼ばれるのも、世界のなかで日本の憲法だけです。

 憲法ができた70年前、日本の社会は、憲法が描くものとは遠くかけ離れていました。紙の上に書かれた理想にすぎませんでした。でも、そういう優れた憲法があったから、みなさんのおじいさん、おばあさん、お父さん、お母さんの世代は、日本の社会を憲法の理想に近づけようと努力してきたのです。そして、少しずつ日本の社会は変わってきて、いまみなさんが住むような社会になったのです。

 70年以上前は、国を批判することは自由にできなかったのですが、いまみなさんは自由に発言ができるでしょう。70年以上前まで、日本はずっと戦争してきましたが、憲法ができてからは戦争で誰も殺していませんし、殺されてもいません。みなさんには、まだいろいろな不満や願いがあると思いますが、それを実現するためにも、優れた憲法を活用するのが近道です。

 なぜそんな憲法ができたのでしょうか。それは、いまの前の憲法である大日本帝国憲法(明治憲法)への反省でした。大日本帝国憲法では国民の権利が制限され、軍隊の活動には誰も口を差し挟めないようになっていて、日本は国民の暮らしを犠牲にして、戦争への道を進んでいきました。いまの憲法には、そんな時代は二度とごめんだ、平和で自由な暮らしをしたいという国民の願いがつまっているのです。この憲法を改正しようということが議論されていますが、大日本帝国憲法のような時代に後戻りしてはなりません。

 そんな憲法のことを分かってもらおうというのが、このシリーズの目的です。みなさんが分かりやすいように、そして憲法を身近に感じるように、憲法の優れた部分をマンガで表現したりもしています。この本を読んだみなさんが、憲法に関心をもち、もっともっと憲法のことを勉強したいなと思ってもらえたら幸せです。