2014年7月10日

 いやあ、きょうの毎日新聞にはびっくりしたなあ。政府与党内の法案化作業のことである。集団的自衛権を発動して自衛隊が海外に派兵されるとき、その根拠を自衛隊法第76条にある「防衛出動」におくとのことなのだ(少し条文を緩和してだけど)。その理由について、以下、毎日の報道の引用。

 「7月1日の閣議決定は、集団的自衛権を「わが国を防衛するための自衛の措置」としており、新たに認める自衛隊活動は「他国防衛」ではないことを条文上明確にする狙いがある」

 ぐちゃぐちゃだね。他国への攻撃でも日本の存立が脅かされるような事態があるからとして、集団的自衛権の解釈改憲が強行された。だけど、そんな事態があるとすれば、それは集団的自衛権ではなくて個別的自衛権だろうと批判され、閣議決定は両者がごちゃまぜになっている。

 閣議決定の段階なら、意味が分からなくなっても、いろいろな要素をいれるだけいれて、「個別的自衛権っぽくで公明も満足」「集団的自衛権という言葉があるから自民も満足」ということでよかったのだ。だけど、法律にそれを落とし込むとなると、いろいろ矛盾が出てくるよね。

 自衛隊法って、「日本への武力攻撃が発生」したときに自衛隊が防衛出動するわけだが(76条)、その範囲は、じつは少し広い。正確に引用すると、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」なのだ。

 一方、閣議決定は、集団的自衛権の発動要件を、こう規定する。「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」である。

 そうなのだ。現行法の個別的自衛権は、「明白な危険が切迫している」場合に発動される。一方、集団的自衛権は、「明白な危険がある場合」に発動される。

 「切迫」というのは、誰もが理解するように、迫っているということであって、まだ危険がない場合も含む。しかし、集団的自衛権というのは、「危険がある場合」に限られるのだ。

 ということで、世論の批判のなかで、個別的自衛権の発動要件よりもきびしいと思えるような要件を集団的自衛権に課してしまった。だから、自衛隊法の防衛出動のなかに取り込むしかないという判断なのだろう。

 そして、これも閣議決定にあるけれど、それを「国際法上は、集団的自衛権」だといって、アメリカに胸を張る。日本国民には「我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置」と弁解する。

 いやはや、ご苦労なことである。防衛省筋からは、本当に法案化ができるのかという懸念の声も聞こえてくる。もちろん、そこを強行してくるのだろうけど、できあがった法案は、矛盾だらけのぼろぼろのものになる可能性がある。闘い甲斐があるよね。