2014年7月11日

 6月20日に発表されたとき、ザッと目を通しただけだったのを、本日、真剣に見た。なんといっても、新聞の小さな活字で2ページにもなるものだから、すぐに読み通すのは、仕事しながらだとつらいからね。

 まあこれは、タイトルを見れば分かるように、河野談話とかアジア女性基金とかについて、韓国政府がいったんはOKといったものが覆っていく経過を検証したものだから、その意図と無縁に読むものではない。韓国政府には道理がないよなということが、読んでいくと実感できるようにできているからね。

 ただ、そういう意図と離れて読むと、なかなか面白い読み物ではある。ご一読をお薦めしたい。

 まず面白いのは、外交交渉というもののやり方というか、醍醐味というか、それがリアルに伝わってくることだ。「ああ、こういうやりとりをしているのだなあ」って、ふつうに暮らしていると分からないものね。

 とりわけ、慰安所の設置、慰安婦の募集に関して「強制」があったかなかったか、その文言をどうするかについてのやりとりである。双方の立場をどう貫くか、どこまでなら妥協できるのかについて、想像できる範囲のことだったけど、詳しく書かれている。軍による強制なのだから「指示」という言葉は使えという韓国側と、強制したわけではないから「要望」だという日本側と、最後に「要請」で落ち着くという経過とか。

 でも、そうやってできた妥協の産物であっても、全体として出来上がった河野談話は、高く評価されるものになったわけである。妥協をバカにしてはいけない。

 それと、もうひとつ面白かったのは、河野談話の基本的な骨格は、慰安婦に対する聞き取り以前に出来上がっていたということだ。慰安婦に対する聞き取りは、談話の内容をつくるためというより、真相究明に対する日本政府の真摯な姿勢を示し、慰安婦の気持ちによりそい、それを理解するために行われたという事実である。

 これって、事実上、河野談話を否定する右派への批判ともなっている。だって、右派は、この慰安婦の証言がデタラメだらけで、その証言のうえに河野談話ができたのだから、絶対に信用できないと主張してきているからである。

 そう、河野談話の水準は、それ以前の政府による調査によって明らかだったのだ。それって、防衛省をはじめ関係省庁における文書の調査、アメリカの国立公文書館での文献調査、軍関係者および慰安所経営者等への聞き取りの結果なのである。

 そういう調査で河野談話ができたのだから、とってもデタラメとは言えないだろう。この経緯を発表したことについて、右派の言論をおさえるという意図が安倍さんにあったとは思えないが、たとえ別の意図があったとしても、ちゃんと事実関係を検証すると、こういう結果も生まれてくるということなのだね。

 やはり、歴史の検証って、事実関係をリアルに調べることは大事だ。政治的な要請によって過去の事実を隠したり、歪めたりすると、判断に大きな誤りが生まれるだろうね。