2014年7月18日

 昨日、集団的自衛権の閣議決定の日の安倍会見にふれた。湾岸戦争とイラク戦争をあげて、そういうものに武力行使を目的として参加しないという内容の会見のことである。

 その日に書いた記事でふれたことなのだが、私がいちばん驚いたのは、このふたつの戦争の名前が出てきたことではない。もうひとつの大事な戦争の名前が出なかったことである。

 そう、アフガン戦争のことである。われわれのこの20年来の記憶には、この3つの戦争が刻みつけられているはずである。とりわけアフガン戦争は、記憶の世界のものではなく、3つのなかでまだ進行中の戦争なのだから。

 安倍さんは、そのアフガン戦争のことを、日本が参加しない戦争として明言しなかった。そこには深謀遠慮があると考えるのは、おそらく私だけではないだろう。

 だから、国会審議のなかでは、誰かにそういう角度から追及してほしかったと思う。まあ、これからも審議はあるだろうから、期待する。

 おそらく安倍さんは、聞かれたら、「そういう種類のものには参加する」と明言すると思う。いくつも理由が考えられる。

 何よりもまず、3つの戦争のなかで、アフガン戦争だけが唯一、集団的自衛権が発動された戦争だということである。アメリカが個別的自衛権を発動し、NATOが集団的自衛権で参戦した。過去の集団的自衛権の発動事例のなかではもっとも典型的なもののひとつであるから、これに参加しないとなれば、いったい何のために閣議決定までやったのかということになるだろう。

 しかも、現実味がある。対テロ戦争だからね。

 何年か前、国連が戦後の戦争の分類をしていたが、冷戦終了後、国家と国家のあいだの戦争は、年に1回程度になっている。それに代わって台頭しているのが、対テロ戦争だ。もし日本が集団的自衛権を行使するとなれば、対テロ戦争になる可能性が高い。

 さらに、現在の情勢である。イラクで、スンニ派を基盤とするテロ集団が勢いを増していて、不安定化している。オバマさんは躊躇しているが、アメリカが戦争で民主化に成功したはずのイラクで、じつはあの戦争に何の意味もなかったと分かるのは、アメリカにとってつらいことだろう。だから、世論の動き次第では、何らかの対テロ作戦がやられる可能性がある。

 そして、「日本の存立」にも重大な影響がある(ことになっている)。先日の国会審議でも、日本の存立とは、経済的なダメージも含むということになっていたから、日本の生命線といわれる中東でのテロ戦争は、「自衛権」発動にうってつけなのだ。

 だから、真剣にこの問題に取り組まねばならない。がんばります。