2015年4月13日

 統一地方選挙の結果は、誰もが想定したとおりだろうね。自民党は前進、中間政党は混迷。共産党は引き続き意味のある躍進をしたが、安倍政権を退場させるだけの展望は、まだ見えてこない。とりわけ、来年の参議院選挙後の改憲発議、国民投票を見据えると、参議院選挙で護憲派が過半数を占めるか、少なくとも三分の一に達することは不可欠だが、そのような動きをつくりだすだけの力は育っていない。

 その改憲のことだが、先週末、ある新聞の記者と意見交換をしていて、面白いことを聞いた。これまで、第1回目の国民投票は諸政党が一致しやすいものでということで、環境権や国家緊急事態などが想定されていたが、環境権を唱えてきた公明党がその旗を降ろしたと報道されていることに関連した話である。

 そういう話があったので、先日、災害を国家緊急事態として権力を集中させることが必要かどうかを研究している弁護士とお会いし、本の執筆をお願いしてきたところである。「さよなら安倍政権シリーズ」に入る予定。

 それであたふたしていて、公明党が環境権を取り下げた理由にまで、考えが至らなかった。とりあえず一致しやすいところで、その次に九条でということだと、あまりに安倍さんと同じだということで、党内や支持者に反発があるのだろうなという程度のことを想像していた。実際、これほどの右傾化路線を歩む安倍政権と同じ道を進んでいるわけで、今回の選挙結果を見ても、公明党の危機感は強いと感じる。

 だけど、その記者が言うには、公明党情報通の記者は別の見方をしているというのである。それは、環境権が憲法に明文で書き込まれると、財界が困るというのだ。とりわけ現在、原発再稼働を進めている状態にあるわけで、憲法上の明確な権利になったということで訴訟が続々と提起されるようなことになったら、裁判所が原発を合憲と判断するのは難しいだろうと観測されているとのこと。与党としてそういうことはできないということで、公明党が圧力に屈したという見方である。

 護憲派の間では、環境権は現行憲法で明示されていないが、いろんな積み重ねによって憲法上の権利だと裁判所も判断しているので、憲法に明示することは不要だという論理になっている。それはそうなんだが、明示されれば、さらに強い権利になることも疑えない。

 これだけ脱原発の世論が広がっているわけだが、この世論は、憲法をどうするかで一致した世論ではない。その中で、憲法に環境権を書き込めという運動が出てきたら、護憲派はどう対処するのか。いろんなことを考えておかないと、憲法が焦点となる来年の参議院選挙、そして国民投票を勝ち抜くことは、そう簡単ではないのだろうなと感じた次第である。