2016年8月30日

 先日、ある会議に出ていて、びっくりしました。ある政治家の話題になって、私が「ああ、彼は防衛庁長官の時にね……」と言ったら、参加していた人が、「ええ! その人、ハト派の人だと思っていたら、タカ派の右翼だったんですか」という反応をしたんですよ。

 そう、左翼界隈では、防衛大臣をやっているというだけで、タカ派、反動、右翼ということになる場合があるんですね。その人には、「来たるべき時が来たら、私が防衛大臣をやりたいとずっと思っているんだけど、私も右翼ですか?」と聞き返したんだけど。返事がなかったのは、「そうだ」と思われているからだったりして。

 なぜこんな話をしているかというと、民進党の代表選挙がいよいよスタートするからです。選挙を前にしたメディアの前原さんに対する評価が気になるからです。

 多く(全部?)のメディアが前原さんのことを「保守派」と呼んでいますよね。どこが保守派なんでしょうか。

 いま話題になっている雑誌「世界」のインタビューを見ても、社会民主主義的な考え方を打ちだしているわけでしょう。消費税を上げてもそれを福祉にまわすという点では、日本型社民というより欧米型社民でしょうけれど、社民的な考え方であることははっきりしています。

 それなのになぜ「保守派」と呼ばれるのか。それは、前原さんがずっと安全保障の専門家を自任していて、それを売りにしてきたからだと思うんです。そう、この日本では、安全保障を重視するだけで、もうハト派でなくなってしまうわけです。他に代表戦で「保守派」として名前が挙がった長島さん、細野さんも、安全保障重視ですし。

 これって、深刻ですよね。安全保障というのは国民の大きな関心事なのに、それが保守派の専売特許となっているということですから。じゃなくて、重視してくれる人を保守派と呼ぼうというのが、国民の標準的な見方になっているということですね。

 これでは、革新派というか左派は、安全保障の分野では相手にされていないということです。まあ、ずっと長い間、左派、護憲派は、安全保障政策がない状態が続いたというか、ないことを誇りにしていたというか、外交政策だけで十分だ、等々と訴えることで国民の支持を得ようとしてきたわけですから、仕方がないんですけどね。

 どうやったら、この状態を抜け出ることができるのか。真剣に考えなければなりません。