2017年9月4日

 北朝鮮の「労働新聞」(電子版)の本日付(4日)では、労働党の副委員長が談話を寄せているらしい。そこでは、「水爆の爆発は、地球上から米国という大陸を永久になくそうとする千万軍民の強い信念が込められている」とされているそうだ。すごいね。

 この問題で軍事的な解決は避けなければならないということは、国際社会のほぼ共通の信念だろう。しかし、ではどうやったら平和的に外交で解決できるのかというと、そこをまったく見通せないことが問題を複雑にしている。無条件で対話を開始したとして、一時期は緊張が収まるだろうが、決裂してしまうと、「もう軍事しかない」となってしまいかねないからだ。

 というか、90年以降これまでは、北朝鮮に核ミサイル開発を放棄させ、核兵器を廃棄させることを目標にして、それに対する見返りをどうするかが外交交渉の焦点だった。しかし、今後は、北朝鮮が核ミサイルを放棄することはないという前提で、それでも何を求め、何を譲るのかが焦点になってくるのかもしれない。そこに難しさがある。

 94年の米朝枠組み合意。核兵器に転用可能なプルトニウムを生み出す黒鉛減速炉を無効化し、代わりに軽水炉を提供すること、その完成までの間、重油を50万トン供与することが合意内容だった。米朝間の合意だが、日本も歓迎し、軽水炉の提供費用のかなりの部分を負担した。北朝鮮の核施設の無力化作業が実施され、IAEAの査察官も常駐していた。2002年には拉致問題で小泉首相が訪朝し、平壌宣言を結んだ。将来は明るいように見えていた。

 だが、その2002年の末には、北朝鮮が隠れて高濃縮ウラン製造に取り組んでいたことが判明する。国際社会には核施設の無力化に取り組んでいると装いつつ、ウラでは核開発に全力をあげていたわけである。枠組み合意は崩壊し、北朝鮮はIAEAの査察官を追放するとともに、NPTからの脱退を宣言する。

 その後、米朝に日、中、韓、ロを加えた6か国協議の枠組みがつくられる。2003年から2007年まで、いろいろな提案と議論がくり返された。そのなかでアメリカは、北朝鮮に対して、「脅威を与える意図はなく、侵略あるいは攻撃する意図もなく、体制変更を求める意図もない、という3つのNO」を提示したこともある。ブッシュ大統領が記者会見の席で、金正日国防委員長を「ミスター」の敬称を付けて呼ぶなど、工夫もした。

 いったんは六か国が北朝鮮の核兵器の放棄に合意、共同声明を発表したこともある。ところがその後、協議が続いているのに、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、核実験も実施した。それでも協議はしばらく続いたけれど、2007年を最後に行われていない。

 これまでの協議は、米朝であれ六か国であれ、最終的には北朝鮮が核兵器を放棄することが目標だった。そこは一致するけれど、それに至るまでは時間がかかることも明白なので、ではまず最初の段階で、北朝鮮には何を求め、他の国は何を譲るのかがなかなかまとまらなかったのである。

 しかし、この間の経緯が明らかにしているのは、北朝鮮にはそういう気持ちは皆無だということである。アメリカ本土に確実に届く核ミサイルの保有こそが自国の体制維持を保障するのだと心の底から考えている国にとって、それは当然なのだろう。また、たとえ「ある」と表明したとしても信用できないことは明白だ。

 そういう国と何を目標にして交渉するのか。そこが考えどころではないのか。日本は平壌宣言で、核・ミサイルと拉致の包括的解決を合意しているが、核ミサイル問題の解決がないとすると、国交正常化もないという仕組みになっている。それだと、いつまでたっても拉致問題も解決しないことになる。根底から考え直すべき時が来ているように思える。