2017年9月27日

 明日から沖縄に行ってきます。28日夜は琉球放送(ラジオ)の生番組「団塊花盛り」に出演、29日はジュンク堂那覇店で開かれる鳩山友起夫さんと柳澤協二さんの対談の司会、30日は「自衛隊を活かす会」の沖縄企画の進行役、10月1日に戻ります。その4日間、伊勢崎賢治さん同行の沖縄ツアーがあり、辺野古その他にも行ってきます。で、自衛隊を活かす会の企画を沖縄で宣伝するため、柳澤さんが沖縄2紙に寄稿したものをご紹介します。タイトルはこの記事のタイトルと同じです。

 「安保は政府の専権事項」とうのが、基地問題に関して反対する地元を押し切る政府の論理です。しかし、専権事項ということは、政府が強引に物事を進める「専横」を許すことではありません。専権事項であるがゆえに、政府は、あらゆる疑問を解消する責任と、その裏返しとして、疑問が解けないうちに実行してはいけない義務があるのです。

 「日本の安全のために米国の抑止力が欠かせない」というのが、基地を押し付ける政府の論理です。抑止とは、戦争に勝つ力を見せつけて相手の戦争の意志を挫くことです。抑止が叫ばれるのは、戦争の原因となる対立があるからです。そのような対立があるから安全ではない。安全ではないから軍事力で抑止する。これが、国民の望む安全でしょうか。対立を解消する展望がない抑止を続けるならば、基地がなくなることは、永遠にありません。

 「沖縄の地理的優位性」というのが、沖縄の基地集中を正当化する政府の論理です。「中国や東南アジアに近い」ということは、中国を攻撃し、南シナ海で戦うための優位性です。それは、相手にとっては不利ですから、戦争となれば、真っ先に攻撃しようという動機が生まれます。沖縄は、中国との戦争のとき、前線の島になるのです。それが日本の安全のためというのであれば、沖縄は、再び日本を守る捨石になりかねません。

 そのようにして守られるものは何でしょうか。日本の主権であり、アメリカの主導する海洋秩序です。主権や秩序は、大切なものかもしれませんが、沖縄を廃墟にしてまで守るべきものかどうかが問われなければなりません。そして、そのような戦争の中で、果たして本土が無傷でいられるかどうかも考えなければならないでしょう。

 基地の島・沖縄が背負っているものは、事故、騒音、犯罪、環境汚染といった基地公害だけではないことが見えてきます。日米両政府が進める抑止一辺倒の政策の中で、最も戦場となるリスクを背負っているのが沖縄ということになります。基地を本土で引き受けられない軍事上の理由も、そこにあります。

 それゆえ安保は、沖縄にとって生命の安全にかかわる問題です。沖縄は、安保の「手段」ではなく「当事者」として、外国軍隊の基地がない安保、抑止力によらない安保を発信する責任があると思います。それは、「沖縄のための」基地問題の解決ではなく、日本が唯一の被爆国として核廃絶を発信すべき責任があるのと同様、「すべての人間のための」新たな平和のかたちを求める責任であると思います。

 そのような観点から、私が代表を務める「自衛隊を活かす会」は、ワシントン・東京の視点ではなく、沖縄の視点からアジアを俯瞰した新たな安保戦略を模索したいと願っています。

柳澤協二(元内閣官房副長官補、「自衛隊を活かす会」代表)
 
シンポジウム:「沖縄から模索する日本の新しい安全保障」について
 日時:9月30日(土)午後1時45分〜午後4時45分(開場:13時15分)
 会場:沖縄県青年会館2階大ホール
 会費:500円
 内容:来賓挨拶 糸数慶子(参議院議員)
    報告と討論 伊波洋一(参議院議員)、渡邊隆(元陸将)、伊勢崎賢治(東京外大教授)、加藤朗(桜美林大学教授)、柳澤協二(元内閣官房副長官補)
 主催:「自衛隊を活かす会」(正式名称=自衛隊を活かす;21世紀の憲法と防衛を考える会)