2017年11月15日

 京都の伏見に「新学社」っていう出版社があります。一般書も出していますが、主には小学校、中学校で学ぶ教科の教材を出している会社です。

 そこから本日、「掲載許可願在中」の判子が押された封書が届きました。時々、弊社の本がこうやって教材となることがあるんですね。

 さて、今回はどの本かなと、封書を開けてみてびっくり。私が書いて、弊社から出している『13歳からの領土問題』を使いたいということでした。

 問題を見てみると、領土や領海の箇所ではありません。「空」がどこに属しているのかを定めたルールについて書いている部分なんです。短いから教材として使いやすかったんでしょうね。

 びっくりしたのは、社会ではなくて「国語」だったことです。内容については、それなりに自信があるから本にしているわけですが、「国語」となると、言葉や文法まで試されますからね。責任重大です。

 たとえば、「文章中にAに入る言葉として最も適切なものを次のア〜エから一つ選び、記号で答えなさい」という質問。ところが、それとも、そのうえ、そのため──以上が選択肢なんだけど、ちゃんと自分が正確に言葉を使っているのか、本を開いて確かめちゃいました。

 ということで、もしよろしければ、チャレンジしてみてください。来年、教材になった時点でないと、何が正解か分かりませんけれど。

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 本日、忙しいので、これだけで。

2017年11月14日

 9月末に実施したもので、動画は早くからアップしましたが、選挙その他で遅れていたテキスト版もアップされました。ボランティアなしでこの会も成り立たないわけで、本当に感謝しています。なお、いつものことですが、テキスト版は、報告者の手が入ったもので、これが正式版です。だから時間もかかるんですけどね。

 「沖縄から模索する日本の新しい安全保障」がテーマでした。その全体を掴むにはテキストのすべてをご覧いただくしかありませんが、大事なトピックを1つだけあげておきます。

 元陸将の渡邊隆さんが、沖縄の戦略的地位にふれて、以下のように発言されました。関連する図も示しておきます。

 「パワーバランスというのは、お互いの力関係によって押したり引いたりということが流動的に起きます。アメリカのパワーは、遠くなればなるほどだんだん落ちていくというのはお分かりだと思います。逆に近くなればなるほどパワーは強くなる。これをアメリカと中国に当てはめると、昔は韓国がちょうど分岐点、均衡点でした。昔はバランスの釣り合うところが韓国であったのに、アメリカのパワーは最近どんどん落ちて、逆に中国のパワー、軍事力はどんどん上がっている、それによってバランスが釣り合う均衡点というはどんどん下がって、今は第1列島線を超えてグアムまで、つまり第2列島線の線まで下がっている。これがアメリカと中国のパワーバランスのイメージとして一番分かりやすい図ではないかという感じがします。」

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 さらに、次のように述べられました。

 「沖縄をもう一度確認してみると、このような形になります。中国の観点で見るならば、主としてアメリカの軍事関係者が沖縄は近すぎるのではないかと言っているのは間違いのないところだと思います。
 したがって、沖縄の米軍基地は力のバランスや戦略的な優位性、あるいはオフショアコントロールという中国に対する対抗手段を取るために、グアムまで下がるのだというのは考えられないことではございませんが、これを明確に宣言したことはありません。アメリカの政策、軍事戦略として明確に宣言はされていませんが、そのように考えるのは極めて妥当だろうと思います。」

 これに対して、会の代表である柳澤さんが、渡邊さんの発言はこういう真意だと「解説」しました。以下です。

 「渡邊さんは、まさに戦うというということを前提に、軍事の観点からお話頂いたと思っておりますが、非常に難しいこの時期に難しいお立場で、遠慮がちにおっしゃっておられましたが、私は渡邊さんの元自衛官というお立場で、非常に踏み込んだご発言を頂いたと思っております。
 これは新聞に書いてもらうような話にはならないと思うのですが、渡邊さんのご指摘を都合よく理解するとすれば、アメリカの軍事のプロの間では沖縄に海兵隊がいることは中国に近すぎて危ないのではないかという声があるよということを非常にモデレートにおっしゃっているわけですね。
 中国との関係では、海軍のバランスの問題として今後の趨勢を見なければいけない。北朝鮮との関係では、アメリカが北朝鮮をテーマにいろいろ動いているわけですが、本質的には空軍によって北朝鮮を爆撃する拠点はどこかという話になってくるわけで、海兵隊がどこにいないといけないかというところについては非常にニュートラルな言い方をされていたと思います。
 そういう形で沖縄の問題には触れませんでしたがとおっしゃいましたが、裏返せば非常に大きなメッセージをお述べになっていたように思っております。」

 ということで、このシンポ、面白そうでしょ。是非、全文なり、動画なり、当たってみてください。

2017年11月13日

 時間刻みのスケジュールでした。『改憲的護憲論』の再校ゲラの戻しを日曜日中に投函しなければならず、必死にやっていました。それが最大の仕事。

 そういう土日になることを予測できず、講演会も入れてしまった。土曜日は「北朝鮮問題をどう見るか──地に足の着いた安保・防衛政策を」と題して、大阪の歯医者さんの団体で講演。4000人の歯医者さんが加盟しているそうです。すごいね。

 そして昨日は、このブログでも告知しましたが、映画『第九条』を観たあとで、立場が異なる護憲派で討論しようというものでした。これ、本日夕方6時15分からのMBS毎日放送で、少しだけ報道されるようです。昨日、ずっとカメラがまわっていました。本日は定時で帰らなくちゃ。

 なお、一週間ほど前になりますが、「自由なラジオ」っていうラジオ放送があって、そこで番組を持っているジャーナリストの西谷文和さんと議論してきました。「虚構の多数を占めたアベ政権、今後の政局を占う」というタイトル。明日から、全国のいくつかのラジオ局で、以下の日程で放送されるそうです。へえ、バンクーバーでも放送されるんだ。1時間番組です。お近くの方はどうぞ。見逃した場合は、そのうちアーカイブがホームページで聞けるそうです。

北海道 FMねむろ76.3MHz 日曜 19:00〜20:00
秋田 エフエムゆーとぴあ76.3MHz 土曜 22:00〜23:00
福島 KOCOラジ79.1MHz 月曜 11:00〜12:00・水曜(再) 15:00〜16:00
千葉 市川うららFM83.0MHz 土曜 11:00〜12:00
東京 FM西東京84.2MHz 日曜 19:00〜20:00
神奈川 エフエムさがみ83.9MHz 日曜 24:00〜25:00
富山 エフエムいみず79.3MHz 日曜・月曜 18:00〜19:00
福井 たんなん夢レディオ(たんなんFM)79.1MHz 月曜 15:00〜16:00
徳島 B-FM79179.1MHz 土曜 27:00〜28:00
愛媛県 FMラヂオバリバリ78.9MHz 日曜 21:00〜22:00・火曜 23:00〜24:00
長崎 壱岐FM76.5MHz 木曜 10:00〜11:00
鹿児島 FMたるみず77.7MHz 木曜 13:00〜14:00・日曜(再) 10:00〜11:00
カナダ・バンクーバー CHMB AM1320 木曜 9:10〜10:10

2017年11月10日

(某雑誌に寄稿したものです。)

 もう十数年前のことです。愛読していた「公明新聞」の記事が目に飛び込んできました。大沼保昭さんという、私の尊敬する著名な国際法学者の寄稿です。

 詳細な表現までは覚えていません。「護憲的改憲」という考え方を、おそらく日本で初めて提唱するものでした。憲法九条が戦後の日本で果たしてきた意義、役割を積極的に認め、一項も二項も将来にわたって堅持するべきだ、しかし自衛隊を認めないかのような不都合な部分もあるので、平和主義に反しない範囲で最小限の改定は認めるべきではないか、という趣旨のものだったのです。公明党の提唱する「加憲論」の理論的なバックボーンとなったものでした。

 当時の私は、ゴチゴチの護憲論者でした。九条は一字一句変えてはならないと頑なに考えていたのです。その私にとって、「護憲的改憲」論は衝撃的なものでした。率直な言い方をさせてもらえば、「危ない! この考え方が拡がれば護憲派は敗北する」という受け止めでした。多くの人々は、九条を大切なものと考えていると同時に、自衛隊についても敬意を感じています。私自身だってその一員です。大事なもの二つを包含するような提唱ですから、私さえをも納得させるような要素があり、護憲派の基盤を揺るがすようなものになると思ったのです。

 それ以降、「憲法九条と自衛隊の共存」という現実をどう受けとめ、どう豊かにするのかが、私の課題となります。当時、日本共産党の中央委員会でこの問題を担当していた私は、まず共産党のなかで論陣を張ろうとします。しかし、なかなか共感を得られません。そこで共産党を退職し、編集者・ジャーナリストになって、自由な立場から問題に挑戦しようと決意します。

 最初に編集した本は、その挑戦を象徴するものでした。タイトルは、『我、自衛隊を愛す 故に、憲法九条を守る』。専守防衛の自衛隊に愛着を持ち、それを必死に育ててきた元防衛政務次官、元防衛庁局長らが、自衛隊の海外派兵と九条改憲の動きに警告を発した本でした。元防衛庁長官で自民党幹事長を務めた加藤紘一氏が推薦を寄せ、自衛隊の準機関誌「朝雲」の一面下に広告掲載も許可されるなど、大きな反響を呼ぶことになります。

 その後も同じようなスタンスで本の編集をします。その中で感じたことは、多くの人が九条を大切に思いながら、九条改正を掲げる自民党の政権を支持することの不思議さです。理由として考えられるのは、結局、護憲派の防衛政策不在でした。国民の多くは、九条の理念は大事だと感じながらも、周辺諸国の状況を見渡せば、防衛力がゼロでやっていけるとは思えません。ところが、護憲派は自衛隊を認めていないようだし、護憲派の政党からも防衛政策のようなものが見えてこない。それどころか、防衛力がないほうが平和になると言っているようだ。それなら、いろいろ不安を感じるところもあるけれど、自分の生命を預けようとすると自民党しかない──。国民の気持ちは、このように動いているのではないかというのが、私の推測でした。

 護憲派にも防衛政策が不可欠だと考えた私は、知り合った何人かに本の執筆を依頼します。しかし、従来型の護憲派は、やはり防衛政策を持つべきでないと主張します。一方、防衛の専門家の人たちは、護憲の見地で防衛政策を突き詰めたことがなく、乗り気になってくれません。そこで、それなら自分でと思い詰めて書き上げたのが、『憲法九条の軍事戦略』(平凡社新書)でした。

 しかし、私は軍事の素人です。武器を持ったことさえありません。そんな私が「軍事戦略」を説いても、国民多数の心には響かない。そこで、編集者としてお付き合いを深めていた柳澤協二氏(元内閣官房副長官補・防衛庁局長)らにご相談し、三年半ほど前に結成したのが「自衛隊を活かす会」(代表は柳澤氏)でした。この会は、自衛隊を否定するのでもなく、集団的自衛権や国防軍に走るのでもなく、現行憲法のもとで生まれた自衛隊の可能性を探り、活かそうという趣旨で、元幹部自衛官や安全保障論の専門家をお招きして議論するなどして、防衛問題での提言を行っています。

 今年五月三日、安倍首相が改憲に本格的に乗り出すことを表明しました。その案は、十数年前に私が怖れた「加憲案」でした。けれども、今では怖れることはありません。この十数年間、試行錯誤を重ねながら到達したものがあるからです。

 安倍首相の発言を聞いた時、私の脳裏にすぐ浮かんだのが、「改憲的護憲」という言葉でした。自衛隊を憲法に位置づけたいという改憲派の気持ちは痛いほど分かるけれど、自衛官を大切にするためにも、日本の防衛のことを考えても、やはり護憲を選ぶべきだというのが、この言葉に込めた思いです。そして、改憲しないことで生じる矛盾は、誰よりも護憲派が引き受けるべきだと考えたのです。『改憲的護憲論』(集英社新書、一二月二二日刊行)にご期待下さい。

2017年11月6日

 ということです。この3連休、仕事したしね。明日と明後日は電波の通じないところにいます。では、金曜日に再会を。