2015年3月9日

 内閣府は3年に1度、自衛隊に関する世論調査をやっている。1月に実施され、3月に公表されるのだが、その最近の調査結果が公表された。

 これは、ソ連が崩壊した91年から本格化した調査である。世界の安全保障環境が変貌する中で、国民の意識がどう変化しているのか、きわめて興味深く、私もいろいろな学習会等で活用する。

 一言で言えば、自衛隊を否定的に見る国民がどんどん減っている。一方で、現状維持か増強を望む国民が増えるというのが、法則的な傾向になっているということだろうか。

 まず、自衛隊の防衛力の今後についての質問がある。「縮小した方がいい」「増強した方がいい」「今の程度でいい」の選択肢で聞いている。

 ソ連が崩壊した91年、「縮小した方がいい」という人は、それでも20%もいたのだが、どんどん下がりつづけて、今回、4.6%にまでなった。これまでは3年前の数字(6.8%)だったので、「3分の1になりました」と言っていたのだが、これからは「4分の1から5分の1になりました」と言わなければならない。

 一方、一貫して多いのは、「今の程度でいい」である。91年も62.1%だったが、今回も59.2%である。ただ、あまり変わらないとはいえ、60%を切ったのは初のことであり、変化の兆しがあるのかもしれない。

 その変化は、「増強した方がいい」の増加にあらわれている。91年に7.7%だったのが、今回29.9%だ。6年前が14.1%だったので、急激な増加である。

 この増加につながったと見られるのが、安全面で国民の関心が中国にシフトしていることがあげられる。3年前の調査では、「日本の平和と安全の面から関心を持っていること」の問いに対して、「朝鮮半島情勢」をあげた人が64.9%でトップだったのが、52.7%へと2位になった。変わって、「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」をあげた人が、46.0%から60.5%と1位になった。北朝鮮の脅威程度では自衛隊増強という結論にならないが、相手が中国になると、そうも言ってられないという気持ちが生まれるのだろう。

 同じ調査で、「自衛隊が存在する目的」についての質問がある。そこには基本的に国民の健全さが出ている。

 トップは「災害派遣」で81.9%。3年前に3.11直後で急増し、82.9%になったのだけど、それが維持されている感じ。2番目は「国の安全の確保」で74.3%である。国民の多数は、国の安全と災害派遣のための自衛隊を支持しているということである。

 ただ、前回の質問項目は、「国の安全の確保」(外国からの侵略の防止)として、国の安全とは「侵略の防止」であることが明確にされていたが(78.6%が賛成)、今回、質問項目が「国の安全の確保」(周辺海空域における安全確保、島嶼部に対する攻撃への対応など)として、「侵略の防止」という言葉がなくなっている。一方、サイバー攻撃への対応だとか途上国軍隊の能力構築支援(これは、PKOなどで活躍できるよう自衛隊が支援しているもので、かなり定着した活動)などが選択肢に加わり、自衛隊の活動分野を分散させた印象がある。これは、「個別的自衛権の発動」(=「侵略の防止」)から「切れ目のない防衛」への変貌という、政府の進んでいる方向を具体化する一環かもしれない。

 いずれにせよ、こういう国民的な気分・感情をふまえ、防衛問題、九条問題には対応していくことが求められる。