2015年3月19日

 与党で実質合意ということだけど、なんだかしまりのない議論だったよね。緊張感がないというか。

 そもそも、今回の協議のキモにあたるのは、集団的自衛権の行使の問題だったはずだ。何十年も続いた憲法解釈を閣議決定によって変更したわけだから、それだけの重大な問題だった。

 ところが、今回の協議では、ほとんどこの問題は議論された形跡がない。武力攻撃事態法に、閣議決定で打ちだした要件を書き込むというだけで、どんな事態がその要件にあたるのかなどは、まったく議論されなかった。

 昨年6月の与党協議の際も同じだった。15事例が協議の場に出され、順番に議論するとして、最初のグレーゾーン(3事例)、次の国際平和協力(4事例)と議論が進んだが、一番大事な集団的自衛権(8事例)の議論が開始されたとき、突然議論が中断し、閣議決定に進んだわけだ。

 結局、米軍の後方支援みたいなものは、アメリカから具体的な要望があるので、具体的な議論が出てくるけど、集団的自衛権はそうではないということだと思う。だって、考えてみれば分かることだ。

 たとえば、集団的自衛権のなかで強調されていたのは、アメリカの艦船が攻撃されるとき、それを助けようという事例だった。これって、アジアのどこかでアメリカとどこかが戦争することを想定しているわけだが、考えられるのは、中国とフィリピン、ベトナムが衝突して、アメリカが中国と事を構えるケースだろう。現実にそういう衝突があることで、リアリティをもって語れると思ったんだよね。

 だけど、現実にそういう衝突があるけれど、アメリカは一度も軍事行動を起こしていない。フィリピンの立場に立って動いてはいるが、軍事面で自分が動くことはしていない。そういう判断をアメリカはしているわけだ。それに、もし本格的に軍事行動するときは、自国の艦船は自国で守る万全の態勢をとるのがアメリカである。

 いずれにせよ、日本に守ってもらいたいとアメリカが希望することはない。だから、具体的な議論ができない。だけど、集団的自衛権の解釈は変えたいので、かたちは進む。

 いま本当に大事なのは、テロ問題にどう日本が向き合うかということなのに、そこの議論はされないまま、かたちの議論だけが進んでいく。日本と世界の安全保障をもっと真剣に考えた議論が必要である。そういう議論を与党ができないことが悲しい。