2013年12月16日

 今年最後の会社のメルマガ原稿を書きました。この間の記事と重複する部分もありますが、以下の通りです。

 2014年の年末を迎え、2015年に出す本をどうするか、出版社にとってもいろいろ考える季節になりました。日本と世界がどう動くのか、それに出版を通じてどう働きかけるのか、考えどころです。

 2014年を特徴づけるのは、政治の分野においては、自民党が圧倒的多数を占めるにいたったことでしょう。同時に、それにもかかわらず、年末に焦点となった特定秘密保護法に代表されるように、国民の圧倒的多数は、安倍政権による政治の中身には不安を覚え、かつてない規模で反撃をおこなっていることも重要な特徴でした。

 秘密保護法をめぐる運動の高揚には、多くの方が確信を抱いたでしょう。一方、あれだけの盛り上がりにもかかわらず、自公政権がそれを完全に無視したのは、「余裕」のあらわれだと感じます。

 「余裕」とは、たんに国会議席で多数を占めているというだけではなく、次に選挙があったとしても引き続き多数を占めるだろうという確信から来る「余裕」です。民主党は、政権の座から引きずり下ろされたことから教訓を引き出せず、国民から見放されたままです。維新の会やみんなの党は、ただただ与党にすり寄るだけです。共産党や社民党は、いろいろな課題での一点共闘を広げるためにがんばっていますが、次の選挙で政権をとるための手は打っていません。だから、自民党は、何をやっても政権交代にはいたらないと、高をくくっているわけです。

 こんな政治状況ですから、今後、集団的自衛権のように国民多数から危惧が表明されている問題でも、安倍政権は強行的なやり方をするだろうと思われます。ずっと以前、「対米従属下の帝国主義・軍国主義復活」という言葉が語られたことがありますが、現在の状況はまさにそういうものではないでしょうか。

 そのなかで、出版という仕事には何が求められているのか。一点共闘をそのまま素直に政権共闘に結びつける努力、そのための理論的な問題提起。──私にはそれが大事なことだと思えます。

 いま、一点共闘の対象になっているのは、非常に幅広い分野のことです。民主主義の分野では秘密保護法が代表的ですが、経済の分野でもブラック企業をどうするかという雇用にかかわる問題から、TPPのように国際的な経済関係にかかわる問題まで含まれています。安全保障をめぐっては、まさに憲法九条や集団的自衛権の問題もありますし、普天間基地問題もあります。

 かつて同じように一点共闘が問題になったとき、焦点となったのは、ある時期には消費税の導入であり、別の時期にはコメ輸入自由化であるなど、ときどきの単一の課題でした。しかし現在、安倍政権が暴走するなかで、一点がいくつもに広がっているということは、政治と社会のありかたの全体が問われていることを意味します。

 ということは、一点の課題を実現しようとすれば、政治と社会の変革をも提起しなければならないということです。一点ごとの共闘を大切にするということと、それらを束ねた政治・社会のありようを変革する提起と、それを次の総選挙で実現するための提起と、それらの関係をどう捉えるのか、どう発展させるのか。ここが出版社にとっても考えどころかなと思います。年末から年始にかけて、いろいろ考えをめぐらせてみます。