2013年12月11日

 かもがわ出版は、この度、『母子避難 心の軌跡』と題する本を出しました。サブタイトルが「家族で訴訟を決意するまで」。

 著者は森松明希子さん。福島の郡山市から大阪に子どもとともに避難しています。福島から近畿地方などに避難した方々が、国と東電を相手取り、損害賠償を求めて提訴しましたが、その関西訴訟の原告団代表を務めておられます。

 誰もがご存じのように、福島からの避難者は、大きくいってふたつに分かれています。ひとつは、いわゆる強制避難者というもので、大熊町その他、国が強制避難を指示した地域の方々です。もうひとつは、この森松さんのように、いわゆる自主避難者です。

 自主避難者の方々には、特別な苦労があります。自分で判断して避難しているということで、公的な援助を受けるのに困難があります。また、森松さんもそうですが、夫は郡山にいるままなので、家族が会うという当然のことをするためなのに、時間的にも財政的にも問題が山積みです。

 この本は、その森松さんの家族が、避難してバラバラになった状況下で、支え合いながら生きてきたことをリアルに描きます。そして、家族で訴訟を決意するまでの経過や決意を告白した本です。

 今回の本によって、うちの会社のラインナップの幅が広がりました。3.11以降、福島を扱った本としては、以下のようなものがありました。

福島原発事故(安斎育郎)
被爆者医療からみた原発事故(郷地秀夫)
福島は訴える(福島県九条の会)
フクシマから学ぶ原発・放射能(安斎育郎)
大熊町 学校再生への挑戦(武内敏英)
あの日からもずっと、福島・渡利で子育てしています(佐藤秀樹)
福島再生(池田香代子、齋藤紀、清水修二)
ふくしま こども たからもの(おがわてつし)
夕凪を捜して(尾崎孝史)

 これ以外に数冊の原発物があります。来年2月には、『女子大生 原発被災地ふくしまを行く』の刊行も予定されています。

 いろいろなところで指摘されているように、福島原発事故は、被害者のなかで分断を生みだしています。それを克服し、どうやって被害者の連帯をつくるのかが、とっても大事な課題になっています。出版社としては、避難している人も、残っている人も、それぞれ出版を通じて支援していきたいと考えています。

 大事なことは、福島に暮らす『あの日からもずっと、福島・渡利で子育てしています』の佐藤さんも、福島から避難した『母子避難 心の軌跡』の森松さんも、自分とは異なる選択をした人の気持ちを理解し、尊重することを、それぞれの本のなかで明言していることです。そういう立場が、被害者の連帯にとって不可欠だと思います。

 これらの本が、ささやかながら、被害者の連帯への一歩になればと願っています。