2013年12月18日

 東京にいる間に、ある新聞記者に会った。彼が言うには、安倍さんの周辺は、中国が防空識別圏を設定してくれたおかげでウハウハだとか。対中戦略上必要だと言えば、何をやっても国民が納得してくれるだけの材料を、中国の側から提供してくれたのだからということだった。

 本当に中国の罪は重い。集団的自衛権の解釈改憲が強行されたら、最大の功労者として表彰してあげたいくらい、重い。

 そういうなかで、本日、マスコミでも大きく取り上げられているように、日本で初の国家安全保障戦略なるものが打ち出された。防衛大綱、中期防など3つも同時にである。安倍さん、自信に充ち満ちているのかもしれない。

 だけど、一読した印象は、安倍さんって、小さな人だという感じかな。細々としたことばかり考えていると言えばいいだろうか。

 これは、私だけではないのではないか。たとえば読売新聞。この3つの扱いが面白かった。防衛大綱、中期防、国家安全保障戦略の順に載っていて、国家安保戦略はいちばん下に圧縮されている。見出しもその順で小さくなっていて、それらで位置づけが分かる。

 普通に考えれば、国家安全保障戦略がいちばん重要じゃないですか。しかも、日本で初めてなんですよ。戦略というからには哲学なんですから、それなしに防衛大綱も中期防も語れない。

 だけど、読売の記者や幹部が読んでも、この戦略が重要だと感じられなかったわけでしょう。それはそう思うんですよ。戦略の中身について、立場が安倍さんと変わらない読売の目から見ても、そう見えてしまう程度のものだった。

 だって、そもそもが、10年を見据えたものだって、自分で言っている。戦略って、さっき書いたように哲学なんだから、10年で生命力が途絶えるようなものは、戦略とは呼べないでしょ。実際、サイバーセキュリティーの強化だとか、細々としたことがいっぱい書いているんだよね。

 中国を意識するのは正しいことだ。だけど、本格的に中国に立ち向かうという気構えがあるなら、戦略なのだから、中国4000年の歴史からみて、現在の中国はどう位置づけられるのかとか、そんな分析が必要でしょう。せめて、これだけ日中で経済的な関係が密になっているのに、軍事面では緊張状態が激化するという、歴史上特異な事態をどう分析するのかという程度のことは欠かせない。

 なのに、まったく新しい分析がない。新しい分析をしようという気持ちがそもそもない。いつもべらべらしゃべっていることを、そのまま活字にした程度。中期防(中期防衛力整備計画)より位置づけが低いんだから、戦略ではなく短期防というのが正しいネーミングかもしれない。

 こんな「戦略」をもつ国って、不幸だよな。ということで、来年、本物の戦略を提示するという仕事は、もともと来年の中盤以降の予定だったけど、早めに始めることになった。がんばらなくちゃ。