2013年10月1日

 総選挙の結果、議席の過半数を左派3党が占めたドイツで何が起きるのかを注目していると、先日の記事で書いた。大連立が大きな流れだろうけれど、それに抗する動きも出てくるのか、とっても関心があるからね。

 本日の「赤旗」にその一端が出ている。以下、要約。

 (社会主義を掲げる)左翼党は、3党で政権をつくろうと提案したが、社会民主党と緑の党は拒否。それを受けて左翼党は、新政権成立前に、3党が一致する最低賃金導入だけでも議会で可決しようと提案している。これについて評価する新聞もあらわれるなかで、メルケル与党のなかで、左派が過半数を得たことを直視し、妥協を探る発言も生まれている。たとえば、富裕税や所得税の最高税率の引き上げで財源を確保し、富の再分配をしようという案が与党内で出ている。しかし、これに対して、公約違反だという批判も与党内で出ている。(要約終わり)

 私が面白いなと思うことはいくつかある。3つくらいかな。

 1つ。総選挙の結果、メルケル与党が圧勝した。だから、社会民主党との大連立に向かうとしても、与党ペースで話が進んで、社会民主党は存在感を失っていくだろうと言われていた。だから、連立話はまとまるにしても、時間がかかるだろうというのは大方の見方だったと思う。だけど、実際には、政策でそれなりに一致する左派が過半数を占めているという現実があって、それをテコにすれば、何らかの成果をもたらすことができそうだということである。

 2つ。そういう議論を、議席で10%ちょっとの左翼党がリードしていることだ。自分たちよりかなり大きい社会民主党に対しても、「いっしょに連立を組もうぜ」と提案している。それが拒否されたからといって、へなっとなるのでなく、大事な政策で一致することを示し、しかもそれを議会で可決するための提案をしている。実際、大連立ができたあとでは、その連立合意で政権運営がされるわけだから、政策が実現する可能性は薄れてしまうからね。「政権に入れなくてもやってくれるね」と国民に思わせるだけのものであって、すごい戦略だと思う。

 3つ。そういう全過程を国民が体験していることが大事だと思う。おそらくドイツ国民は、社会民主党には慣れているが、左翼党は東ドイツのイメージもあるし、拒否感ももっている。しかし一方で、いくつかの州で左翼党と社会民主党の連立政府ができていることも知っている。全国レベルでの左翼との動きを見て、なぜ州レベルで連立ができたのかを、多くの国民は納得していくに違いない。支持するかどうかは別にしてね。

 これらの過程が、ドイツの社会変革にとって、大きな意味をもつのだろうと思う。目を離せない。ドイツ左翼党の本、近くちゃんと出しますからね。