2013年10月11日

 この問題では、いったんは提案を拒否した韓国政府が、最終的に受け容れる方向で決断したということが、報道の通りであれば、ひとつのポイントだろう。もうひとつのポイントは、朝日の記事にあった斎藤前官房副長官のインタビューによると、「日韓の支援団体とも会ったが、かけ離れた主張はしていなかった」というものだ。

 アジア女性基金の場合も、韓国政府がいったんは受け容れようとしたが、日韓の支援団体のはげしい反発で撤回することになった。外交のベースでは、いくら気にくわないといっても、国家が正式に結んだ日韓基本条約を大きく逸脱する合意は結びにくく、法的な責任と謝罪というのは簡単ではないというのは、韓国政府もよくよく承知しているのである。

 私は、この案では不満が残る(法的責任を認めていないという点で)支援団体はあるだろうが、それでも一致してこの実現を迫るべきだと思う。残る不満は、これが実現した後、それではダメだという団体が独自に主張しつづけるというようにすべきだと思う。

 だって、前にも書いたように、慰安婦の高齢化は極限にまで達している。韓国政府も支援団体も一致して実現したというものを、亡くなる前に見せてあげるべきではないのか。税金で支出するということで、実体的には法的責任の問題がクリアーされているのに、そんなことよりも、法的責任という文面が大事なのか。

 安倍さんにも言いたい。この線で合意をまとめあげるべきだ。

 きっと心情的にはイヤだろう。だけど、ここで慰安婦の方々が合意し、感謝するものができあがれば、「日本は何もやっていない」という批判がこれから寄せられることはなくなるのだ(「もっとやれ」という批判は残るだろうが)。言い方は悪いが、安倍さんを支持する右翼の連中に対しても、「俺が決断してうるさい連中を黙らせた」と誇ることだってできるだろう。そういう言い方で、過激な世論を抑えることができるだろう。

 国際的にみても、この問題が安倍さんの重大な弱点のひとつであって(あくまでひとつだが)、しかもそれは人権とかにかかわるものなので、いくら経済で名をなしても、これを克服しないとリーダーとは認められない性格のものだ。ウィメノミクスなんて言葉では、誰もだまされない。しかし、慰安婦問題を克服すれば、評価は180度違ってくる。

 だから、支援団体にも安倍さんにも、双方に決断してほしい。慰安婦のためにも、日本のためにも、それが必要だと思うが、どうだろうか。