2013年10月16日

 総理の所信表明演説はできるだけ聞いているんだけど、昨日は特別に忙しく、余裕がなかった。ニュースで断片を見ると、やはり意気軒昂という感じだね。

 それで先ほど、新聞で全文を読んだのだけど、たしかに安倍さんの気分は高揚しているのかもしれない。だけど実態は、なんだか上滑りしているという感想だ。外交と安全保障の箇所は、とりわけそう思う。

 「積極的平和主義」。実は私は共感している。日本国憲法前文って、どこをどう読んでも、日本が先頭に立って、世界から隷属や専制、貧困、戦争をなくすという決意表明のようにしか見えないし。

 安倍さんは、その角度から、たとえば尖閣における海上保安官を褒め称える。当然のことでしょう。だけど、これだけ緊張しているのに戦争にならないのは、憲法九条の原則が働いて、なんでも自衛隊が出て行くというようになっていないからだ。本当に海上保安官はエライ。

 あるいはジブチに海賊対策で派遣されている海上自衛隊。自衛隊が海外に武器をもって派遣されていても、いわゆる戦争の任務にはつかない。海賊対策という治安活動にとどまる。それを安倍さんが誇れるのも憲法九条の「制約」があるからだ。

 もし、その縛りが解かれ、紛争があるから自衛隊が出かけていって鎮圧するんだということになったら、どうなるだろうか。安倍さんには、熟慮がないよな。

 たとえばアフガニスタン。日本は、武器を回収する武装解除の任務につき、世界的な評価を得た。九条がなかったら、逆に、タリバン制圧で血を流す任務についていたかもしれない。前者は私の、後者は安倍さんの、それぞれの「積極的平和主義」だろう。

 「地球儀を俯瞰する視点で」外交しているとして、110回もの首脳会談をしたと誇っているのもむなしい。もちろん、隣の国との首脳会談ができていないことだ。

 価値観が同じ国と仲良くするんだとも言っていたが、これまでその同じ仲間だったはずの韓国が離反しているわけだ。価値観外交はすでに崩壊している。

 そもそも、価値観が違う国とどうつきあい、どう国益を確保するかが外交でしょ。仲間内で褒め称え合っていても、何も生まれない。それは外交とはいわない。なんだか、全文を読みながら、とってもむなしくなってきた。