2015年1月16日

 昨日から東京に来ています。来週火曜日までなんですが、日曜日は、うちの会社が主催する内田樹先生の講演会があるもので、司会をするため、京都を往復しなければなりません。

 何とも非効率な(交通費を無駄にする)出張ですよね。前半の東京出張の目的は、大きくいえば二つ。

 一つが、この記事のタイトル通り。そういう本をつくるので、著者とお会いすることでした。

 いやあ、いい本ができそうです。9年間、陸上自衛隊におられた方で、その後、予備自衛官になり、現在も、自衛隊とはいろいろ結びついているそうです。

 自衛官であることと共産党であることは、ひとつに結びついている。そう言い切る力強さが印象的でした。憲法9条が大切だということも、専守防衛という考え方も、平和外交を望むということも、自衛隊と共産党に共通することだと強調しておられました。

 9年間もやっていると、最後の時期は、新入りの隊員にいろいろ教育する場面も出てくるそうです。銃の扱いを教えるときも、まず憲法9条の大切さを語り、この銃を国民に向けてはならないことをくり返し、そのためにどういいう持ち方をしなければならないのかと語るそうなんですね。

 いい本ができそうです。できあがるのは、夏頃かな。

 もう一つが、2月はじめの沖縄行きの準備です。沖縄で誰と会って何を聞けばいいのかについて、沖縄をよく知っている新聞記者の方に事前取材です。

 聞けば聞くほど、早く本にしたいなあと思います。これは、まだ出版時期をお約束できる状況ではありませんが、必ず出します。

 後半の出張も、仕事は二つ。

 一つは、来年の学校図書館向けの本の準備。日韓条約50年の今年、朝鮮半島の問題をどう小学生、中学生向けの本にしていくのか。大事な挑戦です。

 もう一つは、東京事務所の会議。保育問題について集中的に議論します。

 編集長らしく、自分の関心を優先するのではなく、会社全体の視点にたった仕事という感じでしょうか。

2015年1月15日

 あの何百万が党派の違いを超えて参加した大集会とか(ルペンは参加しなかったけれど)、風刺画に対しても賛否両論が闘わされていることとか、さすがにフランスだねということも少なくありません。だけど、違和感を感じるのは、おそらく私だけではないでしょう。

 テロとの戦争を宣言するのはいいんです。というか、9.11いらい、ずっとそれがテーマになってきたわけだし、そこに新しさはありません。

 その戦争の最初の行為が、空母を派遣してイスラム国を空爆することだという点で、きっと違和感をもつ人がいるでしょう。でも、もうすでにフランスはイスラム国への空爆には参加しているわけであって、これも新しいことではないんです。すでにやっていることを、さもすごいことをやるのだと思わせたいという、オランド大統領のパフォーマンスにすぎません。

 私がおかしいなと思うのは、なぜイスラム国への空爆なのかということです。だって、犯行声明を出したのは、イエメンに拠点を置く「アラビア半島のアルカイダ」なんですよ。イスラム国って、最初はアルカイダとの連携が噂されていましたけれど、いまではアルカイダとの不和が伝えられています。

 あのブッシュ大統領だって、これだけ中東と世界を不安定化させた張本人ですが、アフガニスタンに拠点を置いていたアルカイダをかくまっているとして、タリバン政権を攻撃したわけでしょ。自衛権の3要件を超えるものではあったけれど、少なくとも、アルカイダの武力攻撃されたので、そのアルカイダを叩くのだという、ある種の大義名分があったわけです。

 ところが、オランド大統領には、そんなものが何もないのです。テロリストだったら、フランス人を殺したかどうかにかかわらず、誰でも叩くということでしょうか。あるいは、単独でイエメンを攻撃するのにはさすがに臆していて、オバマさんといっしょだったら後ろ指を指されないだろうということでしょうか。

 テロ反対で世論が盛り上がるのは当然で、もっと盛り上がらないとダメなんですけど、そういうことへの検討がすっぽりと抜け落ちています。この熱狂のなかだったら、多少のことは許されるだろうという甘えもあるんじゃないでしょうか。

 一方、テロリストを取り締まるため、フランス国内において人権侵害につながるような措置をとるかどうかでは、いろいろ慎重な議論があるようです。さすがですよね。フランス内の問題では理性が働いているのに、イスラムの地を武力攻撃する点では理性が欠けているわけです。

 これでは、テロとの戦いは成功しないと思います。アメリカにくわえてフランスまでも理性を失い、ますます世界は不安定化するのではないでしょうか。

2015年1月14日

 昨夜のNHKクローズアップ現代、ヘイトスピーチを取り上げていましたが、なかなかいい番組だったと思います。制作者の一人に、私が「自衛隊を活かす会」の活動で知り合った人がいますが、その努力が実を結んだんだなあと思って、その面でもうれしくなりました。

 ところで、日本でヘイトスピーチが問題になるのと、フランスでテロ事件が起きるのが同時並行ということもあって、いろいろと考えさせられることになりました。ヘイトスピーチと言論の自由のという問題です。

 もっと直裁に言えば、「シャルリー」が掲載するイスラム教預言者の風刺画(侮辱画という人もいますが)は、ヘイトスピーチにあたるのかということです。どうなんでしょうか。

 特定の民族や宗教などの全体を侮辱するということがヘイトスピーチの欠かせない要件ですから、その点ではヘイトスピーチだと言えるでしょう。預言者への侮辱って、宗教全体への侮辱ですからね。

 では、そうだったら、ヘイトスピーチを規制するという場合、何が求められるんでしょうか。法的な規制を求める議論がありますが、じゃあ「シャルリー」のその号は発禁とか風刺画だけ黒塗りということでしょうか。それだと言論の自由を侵すことになるので、発行は自由だが(事前検閲など問題外だし)、何らかの罰則を与えるということになるのでしょうか。

 それとも、法的規制は言論の自由との関係で難しい問題を生みだすので、言論には言論でということになるのかなあ。でもその場合、あの京都の朝鮮学校の場合のように、傷つけられている人をどう救うのかという、別の問題が生まれます。

 その朝鮮学校のことですが、判決では、人種差別だと認定した上で、学校周辺での街宣活動を禁じたのですよね。ということは、学校周辺でなければ(生徒を直接に傷つけるような場所でなければ)、ああいう言論は容認するということなんでしょうか。

 でも、そういうことだと、「シャルリー」の風刺画は、直接にイスラム教徒を傷つけることになるから、やはり禁止の対象でしょうか。そんなことを言いだすと、いま書店に並んでいる「嫌韓本」は、すべて発禁なのか。それとも、お金を払って購入する人だけが中身に接するという建前があるから、「シャルリー」や「嫌韓本」は問題ないのでしょうか。

 考えるべきことが山積みですね。そう簡単に結論が出そうにありません。

2015年1月13日

 どの都市でも、裁判所のある近くには、弁護士事務所とかが集中していますよね。本日は京都の弁護士会館に行ったのだけれど、裁判所の敷地内にありました。国有地を借りているんですって。そういうこともあるんですね。

 用件は、いうまでもなく、自衛隊を活かす会の関西企画です。弁護士として護憲運動の中心を担っている方々に情報をお伝えし、ご意見を伺い、どう協力しあっていけるか、話し合ってきました。

 私の知る弁護士さんは、ほとんどが自衛隊違憲論です。いや、私だってそうですから、当然なんですけど。

 ですから、集団的自衛権は違憲だが、個別的自衛権(とそれを担保する実力組織=自衛隊)は合憲だという考え方は、やはり受け入れるところにならないわけです。しかし、そうはいっても、実際に現場で護憲運動をしていたら、自衛隊は違憲だということでは、なかなか運動面での広がりがありません。いま、そこをどう突破するかということで、いろんな模索があるんですね。

 昨年の総選挙の投票日、自衛隊を活かす会の柳澤さん、伊勢﨑さんのお二人が、長野県弁護士会のシンポジウムに招かれました。6年前のシンポでは、自衛隊が合憲か違憲かを議論したそうなんですね。しかし、集団的自衛権容認という事態のなかで、これまでの議論を超えて、国防の現実論を見据えた議論をしないとダメだということになり、お二人が呼ばれたそうです。

 柳澤さん、「護憲派の人もどうか自衛隊を「敵」扱いしないでください」と訴え、武力に頼らない国防の選択肢を提示したいと語ったそうです。そういう問題を国民が考える土台をつくりたいと。

 集団的自衛権に反対するという一点共闘では、それだけが一致点なので、自衛隊を認めるかどうかという議論は出てきません。しかし、集団的自衛権を容認した閣議決定を撤回するには、政権を視野にいれないとダメなので、じゃあどんな国防を考えているのかが問われて、自衛隊をそこにどう位置づけるかが否応なしに迫られてくるんです。

 だから、本気で集団的自衛権を阻止しようと思ったら、自衛隊についてどう考えるか、結論にたどり着くような議論が、護憲派に求められると思います。自衛隊を活かす会の活動が、その一助になれば幸いです。京都の弁護士さんからも、いろいろなご協力が得られそうです。

2015年1月9日

 毎年、ジュンク堂が出しているんです。全店合計で売上の多い出版社の順位を、300社まで。

 2012年、うちは創業以来初めて、その300社以内に入りました(299位だったかな)。2013年、280位台になり、最近明らかになった2014年の数字が、なんと271位だったんです。その前の年と比べ、売上の冊数が16.7%伸びていて、売上の金額は13.7%伸びています。

 売上金額の上位10社のうち、前年より売上冊数が伸びたのは新潮社(5位)と学研(6位)だけで、講談社、KADOKAWA、集英社、小学館(以上が4位まで)、岩波(7位)、文藝春秋(8位)と軒並み落ちています。まあ、相手が大きすぎて比較の対象にはなりませんが、がんばっていることは確かでしょう。ちなみに、9位はダイヤモンド社、10位は幻冬舎です。

 こうやって、がんばっているつもりなんですけど、がんばってもがんばっても苦しさは続く、という感じですよね、この業界は。経営のことなんか心配せず、いい本をつくることにだけ専念できた時代があるそうですけど、一度でいいから、そんな時代に出版社にいたかったです。

 ま、グチを言っても仕方ありません。毎年10位ずつあがっていって、退職するまでに200位を切ることを目標にしようかな。

 今年も、いろいろ意欲的な本を準備しています。いくつかだけご紹介すると……。

 「世界の言葉で「平和」って何て言うの?」みたいな本。学校図書館向けです。世界の16言語を対象にして、いまその言語を話す若者に、その国の「平和」の意味を取材している最中。国によって「平和」と言っても、意味が違うんですよね。だから、「平和にやろうね」とコミュニケートしても、全然違った理解だったりします。そこを理解し合おうという本です。

 「福島から日本を撃つ」みたいな本。これは、以前少し紹介しましたが、福島地裁で行われている原発訴訟(生業訴訟)の進行に合わせ、この問題に関心のある方々をお呼びし、講演してもらい、それを本にするものです。前に書いたより講演者が増えて、「あっ!」という方も加わっているので、お楽しみに。3.11以来、踏みつけにされてきた福島からこの日本を変えていくという、狼煙のような本にしたいと思います。

 そして沖縄の県知事選挙、総選挙の本。どういう努力が「保革共闘」を生みだしたのか、沖縄限定にしないためにはどんな努力が必要なのか、そんなことをリアルに伝わる本にしたいなと考えています。

 それ以外にも、いろいろです。今年もまた、20冊以上の本を編集することになるでしょうか。自分自身で書くのは、ゴールデンウィーク明けに出てくる安全保障法制の批判本と、他社から出す予定の「慰安婦問題を終わらせる政治学」です。

 今年もよろしく。