2015年1月27日

 人質問題をめぐる議論では、安倍さんの対処がイスラム国を刺激したかどうかなんてのは、きわめて細かい問題だと感じる。そもそも、イスラム国とどう戦うのか、それ以前に、イスラム国は戦う相手なのかどうかということが、日本の世論レベルではあまり共通の認識になっていない(政府レベルでは明確だけど)。そこがはっきりしない限り、人質問題の対応をめぐる議論も、揺れてしまうのではないだろうか。

 たとえばいま、目の前に毎日新聞の夕刊がやってきた。その一面左肩には、シリア北部にいるクルド人部隊が、イスラム国が占拠していたコバニという地域を軍事制圧し、イスラム国を撃退したと報道されている。

 これをどう見るのか。その一点だけでも、ちゃんとした回答をもっていないと、イスラム国との今後の戦いで見解を持てないだろう。

 私は、もともとクルド人が住んでいた地域だから、この結果は当然だと思う。これからも、こうやってイスラム国の支配地域が元通りになるなら、それは支持すべきだと思う。この軍事衝突において、どっちつかず(よく言えば中立)の立場はとるべきではないと考える。

 だが、もしかしたら、奪い返すにしても、軍事力を使ってはダメだ、支持できないという人がいるかもしれない。最近の護憲派のなかには、ベトナムがアメリカの侵略に武力で抵抗したことについてだって、憲法9条をもつ日本が支援したのはよくなかったという人までいるくらいだから。ましてや、有志連合の空爆という支援を受けながらの奪還だから、論外だという人もいるかもしれない。

 空爆で支援されながら奪い返すって、あの9.11後のアフガンでのタリバン打倒の戦争を思い起こさせる。アメリカとイギリスの空爆を受けながら、軍閥が地上戦を戦ってタリバンを追いだした。あるいは有志連合ということだと、イラク戦争も想起させる。

 だけど、このふたつの戦争が、ひどい政権ではあっても、ひとつの正統政権を倒す戦争だったのに対し、イスラム国との戦争は、そういうものではない。イスラム国がシリアとイラクの正統政権(ひどい政権だが)を脅かしているので、それを有志連合が牽制しているのである(シリアは微妙だけど)。

 有志連合の軍事作戦を支持するかどうかは微妙な問題をはらむ。けれども、イスラム国に追われた人たちが、自分たちの土地を取り戻すため軍事力を使うことまでを、おかしいとは言えないだろう。

 この軍事衝突において中立の立場をとらないということは、程度の差はあれ、反ISISの立場だということだ。そういう立場を明確にしていれば、2億ドルの名目がどうあれ、日本は反ISISなのであって、ISISによるテロの対象なのだ(反ISISでなくてもテロの対象となる場合があることが、無差別殺傷というテロの特徴だけど)。

 私は、それでも反ISISの立場は明確にすべきだと思う。日本が実際にやるべきことは、軍事力の行使であってはならないけれど。

 有志連合の問題も、じつは難しいよね。日経の本日夕刊(電子版)なんか、「イスラム国に対抗する有志連合の一員である日本を巻き込み」として、日本がすでに有志連合の一員であるという認識だ。

 そこにもこの問題のむずかしさが表れている。結論の出にくい問題だけど、これからも考えて、書いていきたい。