2015年1月20日

 2月に出すのがこの本です。サブタイトルは「三浦広志の愉快な闘い」。著者はかたやまいずみさん。

 三浦さんは、福島県南相馬市小高区で3世代つづく農家の方です。そう、福島第一原発から12キロくらいのところです。当然、そこで農業をやることはできず、北に50キロのところ(新地町)で、息子さんとともに農業を再開しています。

 私が1年目の3.11は福島で過ごすのだと決めて、浜通りの人たちに呼びかけ、蓮池透さんの講演会と伊勢﨑賢治さんのジャスヒケシをやることになって、その現地実行委員会をつくったのですが、そこに参加してくれました。当時は、農業を再開するかどうか、まだ決断していなかった時期です。

 2年目の3.11のとき、福島の農産物の直売所でもある野馬土(のまど)というのをつくっていて、放射線量を測って、安全性を確かめたものを売るということをやっていて、そこに案内してもらいました。それだけじゃなくて、原発被災地を視察に来る年間2000人以上の案内をしています。

 いつも生き生き明るい方で、こっちが励ましに行っているのに、逆に励まされるんです。本のサブタイトルとおり、愉快で、不思議な方です。3.11の直後、東電の東京本社前で、福島の農民が牛を連れてきて抗議集会をやったでしょ。それを発案した方でもあります。

 3年目の3.11のとき(1年ちょっと前ですね)、コメをすでに作っていて、野馬土で見学している私たちに三浦さんが、コメの放射線量を検査する機器を前にして言いました。それがこの記事と本のタイトルにもなっている言葉です。

 『福島のおコメは安全ですが、食べてくれなくて結構です。』

 バカじゃないかと思いましたよ。だって、私たちは、安全なコメをつくるために努力している福島の農民を激励に来ていて、安全性を確かめたものは食べてほしいよねと思っているんです。

 三浦さんだって、それまで一生懸命、無農薬のおいしいコメをつくってきて、それが新婦人の方とかに評価され、産直で利益をあげる仕組みをつくってきたのに、誰も買ってくれなくなった。福島の農民は、どうやったらセシウムをすわないコメができるか、いろいろ試行錯誤してきて、努力をしてきて、それを毎年、コメ全袋の検査をして(1000万袋以上です)、確かめるんです。そして、ようやく今年、すべての袋で国基準をクリアーしたんです。

 だから、『福島のおコメは安全になりましたから、食べてください。』というのが、農民の口から出てきて当然なんです。だけど、三浦さんがおっしゃったのは、違う言葉だったのです。

 なぜだろうか、なぜそんなことが言えるのだろうか、そこを取材してつくってもらったのが、今回の本です。(続)