2015年1月15日

 あの何百万が党派の違いを超えて参加した大集会とか(ルペンは参加しなかったけれど)、風刺画に対しても賛否両論が闘わされていることとか、さすがにフランスだねということも少なくありません。だけど、違和感を感じるのは、おそらく私だけではないでしょう。

 テロとの戦争を宣言するのはいいんです。というか、9.11いらい、ずっとそれがテーマになってきたわけだし、そこに新しさはありません。

 その戦争の最初の行為が、空母を派遣してイスラム国を空爆することだという点で、きっと違和感をもつ人がいるでしょう。でも、もうすでにフランスはイスラム国への空爆には参加しているわけであって、これも新しいことではないんです。すでにやっていることを、さもすごいことをやるのだと思わせたいという、オランド大統領のパフォーマンスにすぎません。

 私がおかしいなと思うのは、なぜイスラム国への空爆なのかということです。だって、犯行声明を出したのは、イエメンに拠点を置く「アラビア半島のアルカイダ」なんですよ。イスラム国って、最初はアルカイダとの連携が噂されていましたけれど、いまではアルカイダとの不和が伝えられています。

 あのブッシュ大統領だって、これだけ中東と世界を不安定化させた張本人ですが、アフガニスタンに拠点を置いていたアルカイダをかくまっているとして、タリバン政権を攻撃したわけでしょ。自衛権の3要件を超えるものではあったけれど、少なくとも、アルカイダの武力攻撃されたので、そのアルカイダを叩くのだという、ある種の大義名分があったわけです。

 ところが、オランド大統領には、そんなものが何もないのです。テロリストだったら、フランス人を殺したかどうかにかかわらず、誰でも叩くということでしょうか。あるいは、単独でイエメンを攻撃するのにはさすがに臆していて、オバマさんといっしょだったら後ろ指を指されないだろうということでしょうか。

 テロ反対で世論が盛り上がるのは当然で、もっと盛り上がらないとダメなんですけど、そういうことへの検討がすっぽりと抜け落ちています。この熱狂のなかだったら、多少のことは許されるだろうという甘えもあるんじゃないでしょうか。

 一方、テロリストを取り締まるため、フランス国内において人権侵害につながるような措置をとるかどうかでは、いろいろ慎重な議論があるようです。さすがですよね。フランス内の問題では理性が働いているのに、イスラムの地を武力攻撃する点では理性が欠けているわけです。

 これでは、テロとの戦いは成功しないと思います。アメリカにくわえてフランスまでも理性を失い、ますます世界は不安定化するのではないでしょうか。