2015年1月8日

 フランスの事件は、要するにそういうことですよね。昨日も少し書いたこととつながります。

 9.11があり、アフガニスタンでタリバン打倒の戦争をやり、続いてイラクでフセイン打倒の戦争をやってきました。そのもくろみ通り、タリバン政権は倒れ、フセイン政権も倒れた。イラクからもアフガニスタンからも米軍の戦闘部隊は撤退しました。

 だけど、タリバンは蘇り、アフガニスタンのほとんどを実効支配するに至っています。隣のパキスタンでは、タリバンが過激化してパキスタンタリバン運動を名乗り、マララちゃん襲撃をはじめ手のつけられないほどの勢力になっています。そして、イラクで打倒されたフセイン残党が過激派集団と手を組み、「イスラム国」をつくり、シリア情勢を混沌としたものにするとともに、もともとの出自であるイラクの政権を脅かしているわけです。

 倒したはずの相手が攻勢に出ていて、あの地域が戦争前よりもっと不安定化していて、アメリカなどへの憎しみがどんどん拡大しています。そして、9.11以来に受けた攻撃への報復を欧米諸国においてやるぞと宣言しているというのが、いまの構図でしょう。米軍の「撤退」というのは、アメリカ国民向けに勝利を演出しているだけであって、本当は敗北なんです。

 この局面において、中東やアフガンで日本が何をするかが問われますよね。安倍さんが進めている集団的自衛権というのは、まさに敗北した路線の継承・強化でしかありません。ホルムズ海峡で機雷の掃海をするかどうかがいまなお議論の中心になっているって、いったいこの地域の現実が目に見えているんでしょうか。

 伊勢﨑賢治さんが4年前、うちから本を出しました。『アフガン戦争を憲法9条と非武装自衛隊で終わらせる』という本です。

 4年前はまだパキスタンタリバン運動は生まれていませんでしたが、その源流となったタリバンが住んでいて、パキスタンとアフガンへの出撃拠点となっているトライバルエリア(部族地域)に着目したものです。そこを経済特区にして貧困と格差を抑えるとともに、国連の非武装停戦監視団として丸腰の自衛隊を送り込んで、停戦を実現していこうというものです。伊勢﨑さんは、この提案を実現するため、国連やNATO、アフガン政府なども東京に招いて、国際会議までやったんですよ。

 私にとっては目の開かれるような提案でしたが、あまりに過激とも言える提案で、左翼も右翼も付いて来られず、本もあまり注目されませんでした。だけど、目の前の現実を見ると、このままでは世界はテロの恐怖におびえて暮らすしかなくなりそうで、伊勢﨑提案がすごく現実味をもってきたのではないかと思います。

 いずれにせよ、この事態を前に日本は何をしていくのか、真剣に考えるべきときだと思います。残された時間は、あまりないのかもしれません。