2016年3月22日

 ドイツ(トリーア、フランクフルト)、イギリス(マンチェスター、リバプール、ロンドン)に行ってきます。帰国は31日です。

 2010年6月に第1巻が出た『若者よ、マルクスを読もう』ですが、これは内田樹、石川康宏両氏が、5つの本(「共産党宣言」「ユダヤ人問題に寄せて」「ヘーゲル法哲学批判序説」「経済学・哲学草稿」「ドイツ・イデオロギー」)について4回の書簡で議論をするものでした。最初の書簡が09年1月でしたから、1年半足らずでこれだけのものを論じ合ったことになります。

 一方、第2巻は2014年9月刊行。最初の書簡が10年12月でしたし、取り上げた本は「フランスにおける階級闘争」と「賃金・価格・利潤」でしたから、3年半で2つの本を取り上げた格好です。これに朝日カルチャーセンターにおけるお二人の対談その他をくっつけて出版しました。

 いま紹介したことでも分かる通り、書簡をやりとりするテンポは遅くなっています。その理由は明白で、第2巻の最後の手紙で内田先生が書いている通り、「日本の政治がひどくなったから」です。3.11が起き、この日本を何とかしないといけないのに、政治が劣化したため、それを何とかするためにお二人の忙し度がどんどん増していったわけです。それでも第2巻を出せたのは、そういう時だからこそ、現象面を追いかけるだけでなく、本質についての考察が必要だという、お二人の決意があったからでした。

 お二人で論じあうマルクスの本、まだ4冊もあります。「フランスにおける内乱」、「空想から科学へ」、「フォイエルバッハ論」そして「資本論」。ところが、往復書簡がなかなか進みません。

 その理由も明白です。1つは、「もっと日本の政治がひどくなったから」ですし、それ以上に、その政治をなんとかするための行動にお二人が集中しているからなんです。弊社も、いろいろな場所にお二人を引きずりだしていますし、それにくわえてマルクスもとお願いするのはちゅうちょしますしね。

 それで、今回のツアーを考えつきました。お忙しいとはいえ、本質問題についての考察が必要だということも、もっと大事になっていると思うんです。それなら、マルクスについて考えざるをえない環境にお二人を連れてきて、無理矢理考えてもらおうというのが、今回のツアーの趣旨です。

 とはいえ、その旅費を負担するほどの余裕はないので、読者サービスも兼ねて旅行社にお願いして、お二人と行くマルクスの旅にしちゃったわけです。そして、その旅行における体験がお二人を刺激するでしょうから、旅行中に対談もしてもらって、1冊の本として仕上げることになっています。

 内田先生、東京書籍から釈徹宗さんと「聖地巡礼」というシリーズを出しているんですけど、本の作り方としては、そのパクリのようなものです。でも、先日、東京書籍の担当者の方に経験を伺いにいったんですけど、相当大変みたいです。録音、写真撮影その他、技術面でも失敗できませんしね。

 何より、お二人を刺激するようなツアーの中身が大事です。だからこの週末は、必死で勉強してました。マルクスが「資本論」で詳しく書いている紡績機械がある博物館などにも行くのですが、紡績のことなど、何の知識もなかったですからね。

 この旅のことをブログで書いたら、ロンドン在住の方からメールが来て、いろいろ教えてもらいました。マルクス一家がよく行った公園のこととか、マルクスが研究に没頭した大英博物館の図書館がなくなっていることとか、マルクスの本物のお墓のこととか。

 いろんな方のご協力を得て、この旅が実施できて、本につながっていきます。ありがとうございます。本を楽しみにして下さいね。とにかく明日から行ってきます。ブログの更新は不定期です。