2016年4月19日

 17日付の「赤旗」で、共産党の井上哲士参議院議員がBSフジの「プライムニュース」に出演した記事が掲載されていた。共産党の安全保障政策が番組のテーマだったらしい。

 まず、菅官房長官が北海道5区の応援演説で、「共産党の党綱領は日米安保条約の破棄、自衛隊の解散だ。日米同盟を破棄し、自衛隊を解散して国民の安全を守ることができるのか」とふれている事が紹介されたらしい。それについて、「赤旗」記事は「反共演説」だと批判している(井上さんの発言ではなく、あくまで「赤旗」記事)。

 ただ、菅さんは党綱領そのものを正確に引用している。実際、井上さんも、番組では、「日本共産党が綱領で日米安保廃棄、自衛隊解消を展望する意義を解説」したとされている。同じことを言って、菅さんが言ったら「反共演説」で、井上さんが言ったら正解ということでは、何がなんだかよく分からない。

 一方、井上さんは、安保廃棄と自衛隊解消について、「国民のみなさんがそれで安全が守れると思わなければ、できないし、やらない」と発言した。さらに、井上さんは、国民連合政府は「暫定的な政府」であることを強調しつつ、その政府では日本有事において、「自衛隊を出動させるし、日米の共同対処も安保条約に基づいてやる」とも述べている。

 昨年、共産党が国民連合政府構想を打ちだした直後、志位さんが外国特派員協会で、有事における自衛隊の出動と日米安保条約の発動を認める発言を行った。その後、「赤旗」にはその線での続報が一行たりとも載ってこなかったので、批判が殺到して取り下げたのかと思っていたが(殺到しているのは事実のようだが)、そうではなかったようだ。

 この問題、なかなか深い問題だと思う。新安保法制の廃止ということと、野党共闘と連立政権というテーマが凝縮する問題だ。安保廃棄・自衛隊解消と安保発動・自衛隊出動容認という正反対のことの狭間をどう埋めるかという問題でもある。ちょっと考えてみたい。

 これまで何回もかいてきたことだが、新安保法制の発動阻止という限定的な課題のためには、野党共闘は必要だが、野党政権までは必要がない。衆議院で多数にならなくても、参議院で多数をとって、発動についての承認をしなければいいわけだ。両院で承認しないと、発動できない構造である(南スーダンは以前から派遣されているものの継続なので国会承認案件にはならない)。

 しかし、新安保法制の廃止という課題の実現のためには、安倍政権の退場と安保法制廃止を掲げる新政権の誕生が不可欠である。参議院では野党共闘が進んでいるけれども、衆議院では民進党の岡田さんなども二の足を踏んでいて、そのことが「共闘派」から批判されているけれども、「政権をともにする」ということは相当の覚悟と準備がいる問題であり、特定の課題のための共闘とは質的に異なる高いレベルの共闘であることについては、よく理解してあげないとダメだと感じる。そのことを理解して対応しないと、政権共闘の展望も見えてこない。(続)