2013年7月3日

斎藤美奈子さんが「週刊朝日」で『憲法九条の軍事戦略』の書評を書いてくれました。斎藤さんといえば、私が出版社に入ってはじめて編集した『我、自衛隊を愛す 故に、憲法九条を守る』の書評を朝日新聞に書いてくれた人なんですよ。何か通じるものがあるんでしょうか。いつかお会いしたいと思っています。

斎藤さんの書評は、「今週の名言奇言」という欄なんですね。本のうち、「名言」か「奇言」にあたる部分を特定し、評していくというやり方です。

で、私の「名言」「奇言」は、次の部分です。「軍事力に頼るという気持ちは、平和を願う気持ちと矛盾しない」。

これが取り上げられていることも、うれしいことです。そこが護憲のキーワードのひとつだと思いますから。

いまの日本をめぐる状況下で、多くの人が軍事力は必要だと感じています。その気持ちを否定して、軍事力のことを考えるのは右翼的だとか反動だとか、そういうふうになってしまうと危険だと思うんですよ。

そういう人は、じゃあ改憲して日本を戦争をする国にしたいのかというと、そんなことはないからです。攻められてもいないのに相手の国に攻め入ろうとか、攻められたら相手国を滅ぼすくらい反撃してやろうとか、そんなことも思っていません。

せいぜい、日本の領土を奪われたら困るよね、という程度でしょう。それって、護憲派の多数とも通じると思います。その程度のことなのに、軍事力のことを考えるのは問題だと詰め寄られたら、仲間になれるものもなれなくなる。

少し角度が違いますが、先日、ある学習会で話していて、質疑の時間になって、中国が尖閣を奪ったらどうするかという話になりました。ある人は、「たとえそうなっても、日本政府に対して軍事力は使うなと求めていく」と語っていました。

軍事力を使うか使わないかでこの方と私とは考えが異なりますが、それよりもっと違うのは、中国に対する態度です。中国が日本の領土を奪ったという前提で議論がされているときに、まず必要なのは日本政府に対して何かを求めることではなく、中国への批判になるでしょう。軍事力は絶対に使わないという確固とした信念をもっていたとしても、その中国が軍事力を使ったという想定ですから、まずやるべきことは、軍事力を行使した中国を批判し、中国軍隊の撤退を求めるためのキャンペーンではないでしょうか。

中国には何も言わないで、日本政府にだけはもの申すということでは、「(領土を奪う)中国の仲間か」みたいに思われてしまいます。それでは多数の国民の支持を得られることにはならない。

あれ、話が変な方向に来ましたね。この問題を論じると、すぐ熱くなるのが、私の欠点かな。話題は斎藤さんの書評でした。まあ、画像を掲載しますので、読んでください(本もね)。「護憲派のあなたにも改憲派のあなたにも発想の転換を促す、これはなかなか魅力的な一冊だ」ということですから。

斎藤美奈子書評1