2013年7月5日

現局面における護憲の闘いも、憲法それ自体をまもるというだけのものではない。それよりも、日本社会をどう変革するかという課題が、密接に関わっているように思う。

あまり議論されていないことだが、この連載でもとりあげた民法について、いま改正が俎上にのぼっていることをご存じだろうか。法務省のホームページで、4月から6月はじめまで、パブリックコメントを受け付けていた。

このうちの「債権関係」の改正というのが重点なのだが、それは経済のグローバル化にともなう改正が目的である。具体的には、契約に関するルールを国境を越えてどう標準化するのかということだ。TPPによって、モノもサービスも国境線を取り払って、資本も人も自由に移動し、商売し、企業を興すような世界を実現することがめざされているわけだが、日本の民法もそれに対応できるものにしようということである。

この世界では、現行憲法の第22条についての自民党改憲案が話題になっている。現在、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」となっているのだが、そこから「公共の福祉に反しない限り」を削除するというものである。

ご存じのように、自民党改憲案の中心は、人権への制限をつよめるところにある。「公共の福祉」を「公益と公の秩序に」に置き換えることによって、そうしようとしているわけだ。

だけど、この22条に限って、自民党改憲案は、自由と権利を拡大するのである。「居住、移転、職業選択」の自由は、公共の福祉によって制約されないことを明確にするのである。ここには、国境をこえた資本と人の移動をどう自由化するかという思惑が、明確に反映していると指摘されている。

そう考えると、自民党改憲案の他の条項も、たんに「復古的」というものではないことが分かる。自民党がめざす日本社会の将来像にピッタリとしてくるのである。

国際競争に勝ち残れる強い企業と人に自由と権利を保障するわけだ。そうでない人は、そんな企業の邪魔になってはいけないことが最優先だから、、権利を制約しますよということだ。国のお金は強い企業に回すので、ふつうの人は家族で助け合って暮らしてくださいということだ。グローバルに進出する企業の利益は「国防軍」でまもりますよということだ。そうやって国民を分断するわけだから、天皇を元首化することによって、唯一、日本国民としての一体感を醸しだそうというところだろうか。(続)