2013年10月2日

 オークラ出版というところが、最近、ムック「撃論シリーズ」の一つとして、『日本国憲法の正体』というのを出しました。1200円もします。その第1特集が「日本国憲法の病理」というものなんですが、第2特集が「憲法改正を阻む反日勢力」。

 表紙を見てください。その第2特集では、私の護憲論が批判の対象になっているではありませんか。「憲法九条軍事戦略論の嘘と詭弁 内田樹と松竹伸幸の奇妙な護憲論を撃つ」ですって。
オークラ出版
 『9条でどうでしょう』(内田)と『憲法九条の軍事戦略』(松竹)への批判なんです。いやいや、内田樹先生と並べて批判するって、先生に失礼でしょ。

 いまから出張で東京に向かい、明日はそのまま福島まで行くこともあって、その中身を紹介するヒマはありません。でも、「憲法改正を阻む勢力」の筆頭にあげられていることは(表紙においてですけど)、とっても光栄です。私が書いていることが、改憲勢力にとって、「阻む」力になりそうだと認定されているということですから。

 それにしても、『憲法九条の軍事戦略』に真っ先に反応し、ながあーい批判を書いたのは、いまでは名前を知らない人の方が多いでしょうか、革マルの「解放」でした。ということは、今回のムックとあわせると、極左と極右が批判的に反応したことが分かります。象徴的な出来事だと思います。

 私、このブログで、自分の書いていることは、左右の両派から嫌われるかもとか、護憲派にも改憲派にも異論が出るだろうって、ときどき書きますよね。それは理由のあることなんです。

 私たちが抱える多くの問題は、護憲派はすべて正しいとか、改憲派はみんな間違っているとか、そんなことはないんです。本気で戦争したがっている改憲派って、そんなにたくさんいるわけではありません。だから、多数を得るためには、改憲派の心にどうやって響く言葉を届けられるのかを考え、発信しなければなりません。実際に人の心にある悩みや矛盾を受け止め、リアルな現実をふまえ、発言しなければなりません。

 だけど、右にも左にも原理的な人というか、観念の世界に身を置いている人がいます。そういう人にはリアルな言葉は通用しません。だから、極左と極右の両方から批判が出るような言葉が、実は両派に(だから国民の多くに)伝わるのだというのが、私が自分なりの体験を通じて得た考え方なんです。逆に、片方からしか批判が出ないというのは、片方からしか受け容れられないというのと同じで、多数にはなれないということです。

 だから、批判を受けて、とってもうれしくなりました。どうもありがとうございました。

2013年10月1日

 総選挙の結果、議席の過半数を左派3党が占めたドイツで何が起きるのかを注目していると、先日の記事で書いた。大連立が大きな流れだろうけれど、それに抗する動きも出てくるのか、とっても関心があるからね。

 本日の「赤旗」にその一端が出ている。以下、要約。

 (社会主義を掲げる)左翼党は、3党で政権をつくろうと提案したが、社会民主党と緑の党は拒否。それを受けて左翼党は、新政権成立前に、3党が一致する最低賃金導入だけでも議会で可決しようと提案している。これについて評価する新聞もあらわれるなかで、メルケル与党のなかで、左派が過半数を得たことを直視し、妥協を探る発言も生まれている。たとえば、富裕税や所得税の最高税率の引き上げで財源を確保し、富の再分配をしようという案が与党内で出ている。しかし、これに対して、公約違反だという批判も与党内で出ている。(要約終わり)

 私が面白いなと思うことはいくつかある。3つくらいかな。

 1つ。総選挙の結果、メルケル与党が圧勝した。だから、社会民主党との大連立に向かうとしても、与党ペースで話が進んで、社会民主党は存在感を失っていくだろうと言われていた。だから、連立話はまとまるにしても、時間がかかるだろうというのは大方の見方だったと思う。だけど、実際には、政策でそれなりに一致する左派が過半数を占めているという現実があって、それをテコにすれば、何らかの成果をもたらすことができそうだということである。

 2つ。そういう議論を、議席で10%ちょっとの左翼党がリードしていることだ。自分たちよりかなり大きい社会民主党に対しても、「いっしょに連立を組もうぜ」と提案している。それが拒否されたからといって、へなっとなるのでなく、大事な政策で一致することを示し、しかもそれを議会で可決するための提案をしている。実際、大連立ができたあとでは、その連立合意で政権運営がされるわけだから、政策が実現する可能性は薄れてしまうからね。「政権に入れなくてもやってくれるね」と国民に思わせるだけのものであって、すごい戦略だと思う。

 3つ。そういう全過程を国民が体験していることが大事だと思う。おそらくドイツ国民は、社会民主党には慣れているが、左翼党は東ドイツのイメージもあるし、拒否感ももっている。しかし一方で、いくつかの州で左翼党と社会民主党の連立政府ができていることも知っている。全国レベルでの左翼との動きを見て、なぜ州レベルで連立ができたのかを、多くの国民は納得していくに違いない。支持するかどうかは別にしてね。

 これらの過程が、ドイツの社会変革にとって、大きな意味をもつのだろうと思う。目を離せない。ドイツ左翼党の本、近くちゃんと出しますからね。