2013年11月5日

 すごく話題になっていたけど、どうも話題のなりかたに違和感があって、何を書くべきか分からなかった。だけど、これだけの問題だから、何かを書いておかなくちゃね。

 いろんな違和感があるけど、誰もが指摘するのは、ずっと天皇の政治利用をしてきた自民党とかが問題にするのは、ちょっとおかしいだろうということだ。その指摘には私も共感する。

 だけど一方で、天皇の政治利用という点で、自民党と同じようなやり方をしている山本太郎という人物にも、かなり違和感を感じる。左翼だったら、そんなやり方はしないだろうという違和感だ。もしかしたら彼は、本質的には、曲がりなりにも国民の力で物事を達成するという建前のある左翼ではないのかもしれない。彼が右翼だというなら、納得できる行為だからね。

 それに、福島の被ばくのことを天皇に知ってほしかったという、彼の発言にも違和感がある。天皇は、福島をよく訪れていて、私が浜通りの家におじゃましたりすると、その際に写したという大きな写真が飾ってあったりする。山本氏よりは頻繁に行っていて、福島の実情をよく知っているのではないだろうか。

 また、前にも記事に書いたことがあるが、天皇は福島を訪れる際、農家に行って桃を食べたりして、その努力を励ましたりもする。そういう天皇に対して、実情を知らないだろうからオレが教えてやるという態度をとるのも、どうも理解できない。

 いや、もしかして、福島の果実や農産物を食べるという天皇の行為を批判するために直訴したというなら、これまでの彼の言動からして素直に理解できるのだけどね。どうなんだろうか。

 いずれにせよ、「政治利用」という問題は難しい。福島の桃の話にしたって、いろいろな努力を重ねて、ちゃんと計って流通しているのだから、それで大丈夫だという立場がある。一方、それでも福島のものは流通させてはならないという立場もある。そういうなかで、天皇が「福島の桃はおいしい」と発言するのは、「政治的行為で憲法違反だ」と言う方もいるかもしれない。

 そういえば以前、同じようなことがあった。園遊会で東京都の教育委員が、「日本中の学校で、国旗を掲げて国歌を斉唱させるというのが、わたくしの仕事でございます。いま、頑張っております」と発言し、天皇が「強制になるということでないということが、望ましいですね」と答えた。これに対して、右翼はさすがに天皇批判ができずに黙り込んだが、左翼のなかに「憲法違反だ」と批判するのがいたりしたよね。

 いまの天皇って、たいへん理性と良識があって発言するから、その発言を憲法の条文解釈という角度だけからみると、右と左がごちゃまぜになるのかもしれない。本当にむずかしい問題である。