2016年11月8日

 明日の今頃は、もうアメリカ大統領選挙の結果が出ているんですね。どちらが勝つにせよ、「こっちが勝ったほうがマシだよね」と思わせないところが、今回の選挙の特徴だと思います。

 ヒラリーが勝ったところで「安心」はないですよね。最初から世論に不人気な大統領になるだけに、日本をはじめ外国には「強い」ところを見せることになるのではないでしょうか。

 トランプってイヤですけれど、安保タダ乗り論や日本核武装論をめぐって、やり方次第では本音の議論が開始される可能性もあります。日米間にというのではなく、日本国民の間でです。

 しかし、どちらにせよ、「こんなアメリカに頼るのか」という国際世論が増大していくことは確かでしょう。その流れをどうつかみ、どう活かすのかが問われるのだと思います。

 昨日は高江に言ってきましたが、右翼が活発化しているようですね。街宣車が乗り付け、挑発しているので、高江のゲートまであと車で5分というところで、警察が規制していて動けなくなりました。

 1時間ほど待って、右翼の街宣車がいなくなり、ようやく徒歩でならということで警察の許可が下りましたので、30分ほど歩いて行きました。それでも、いつまた右翼が来るか分からないということで、愛知県警とか警視庁の方々の「警護」付きで現地へ。なんとか午前中の集会には間に合いました。

 そうしたら、また右翼がやってきて、「反日勢力」とか騒ぎ立てるんですよ。笑っちゃいますよね。米軍のヘリパッドを推進する側に立っている右翼が、反対する側に対して、「反米」という批判を投げかけるんなら分かるんですけどね。

 日本政府は年内に工事を完成させ、12月20日に北部訓練場の返還式典をするそうです。「こんなに返還された」と宣伝して、成果を誇って解散総選挙ということでしょうか。

 でも、そういうことを繰り返しているうちに、3年前、参議院選挙で糸数さんが勝ち、県知事選挙で翁長さんが当選し、総選挙でオール沖縄が勝利し、今年、また参議院選挙で伊波さんが勝ったわけです。「そして自民党国会議員ゼロの県ができた」。こんなサブタイトルをつけたドキュメンタリー本を、来年初頭、出版するつもりです。乞うご期待。

2016年11月7日

 朝早くやってきて、下の画像に関係する仕事をしていました。実るのは来春でしょうか。

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 継続して野心的な仕事も企んでいます。これが実現すると、世の中を少し動かすことになるのではと考えています。乞うご期待です。

 本日は朝から高江です。ということで忙しいですので、まとまった記事は明日ということで。

2016年11月4日

 で、結局、どうすればいいのか。私の考え方は以下の通り。

 領土不拡大が第二次大戦の戦後処理にあたって連合国の原則だったというのは、なかなかロシアには当てはまらないので、そう簡単ではありません。しかし、北方領土のロシアへの編入というのがスターリンの横暴だったということで、ロシア側を攻めていくことは大事なことです。

 やはり、ドイツとの戦争で2000万人の命が奪われた代償として欧州での領土変更があったことは、欧州諸国も納得せざるを得ない面があったわけです。1100万人のドイツ人が住む土地を奪われるのは仕方ないみたいな受け止めがあった。

 だけど、日本との関係では一片の道理もなかったことは明白です。そういう主張は実際には、スターリンの横暴にとどまるのではなく、社会主義時代の横暴を印象づける結果にになっていくんでしょうが、攻め手はここにあるのです。この間、共産党の小池さんが、「原則で攻めないと4島も返ってこない」として、4島返還に含みを持たせたみたいな発言をしておられますが、4島のためにも原則的な攻め方は大事だと思います。

 90年代初頭、鈴木宗男さんや佐藤優さんが交渉を担っていたときは、そういうアプローチだったわけです。全千島を放棄するサンフランシスコ条約を前提にして交渉したのに、千島に属する国後、択捉の問題が交渉議題となったのは、驚くべき結果でした。

 それで少し動いた。だけど、現在の安倍政権は、ロシアをどう攻めるかということを抜きにして、どう経済援助でその気にさせるかという思考しかないようです。これでは、相手に足元を見られてどうにもなりません。

 同時にその上で、90年代に実際に日ロ交渉が開始され、いろいろな到達点があるわけですから、それを無視することはあり得ないでしょう。日ロの合意として領土問題とは4島の問題だということは合意されているので、いまさら全千島の問題だといったら、外交交渉は成り立ちません。

 国後と択捉を放棄したサンフランシスコ条約が前提で交渉しているわけですから、その国後と択捉に住んでいた方々の権利をどこまで保障できるのか。実際には、それが焦点となっていくでしょうね。そういう人の権利を踏みにじるような決着だと、安倍さんにとって向かい風が吹くことになると思います。

 しかし、安倍さん、ロシアに食い逃げされそうな報道も多いですね。向かい風どころか、台風になる可能性もあります。おカネで解決するというやり方では、解散総選挙なんて、やはりあり得ない感じがします。

 わあ、『「日本会議史観」の乗り越え方』について、芝原拓自先生から激励のお手紙を頂いちゃった。ということで、来週はそのあたりの話題を。

2016年11月2日

 共産党は全千島の返還を求めましたが、千島はサンフランシスコ条約で日本が放棄することを約束しており、法的には説明できないことでした。そこで共産党は、千島放棄を決めた「サンフランシスコ条約第2条C項の廃棄」という方針をとります。

 私などは若い頃、共産党が社会主義の総本山であるソ連と徹底的に対決していることで、共産党に対する信頼を深めていました。千島問題でも政府や他の政党が「4島」で満足しているなかで「全千島」と言っていて、かつ平和条約の廃棄という過激な方針をとっていることで、「すごいなあ」と感心していたわけです。

 しかし、この方針は、共産党に近い学者、とりわけ国際法学者からは評判が悪かったようです。何と言っても、廃棄する対象が「平和条約」です。その条約を結ぶことでようやく戦争を終わらせたと思っていたら、共産党がそれを一部分とはいえ廃棄するといっているわけですから、心穏やかではいられなかったのでしょう。「それで戦争になったらどうするのだ」というわけです。

 しかも、実際にどうするのかということになると、とっても複雑です。サンフランシスコ会議で何十か国が集まって決めたものですから、「これを廃棄したよ」と各国に通告して終わりというわけにはいかないでしょう。条約の一部を廃棄するかどうかを決めるため、大がかりな国際会議を開くなどということが果たして可能なのか、否定的な見方が強かったわけです。

 ただし、条約の関連条項を廃棄するという方針は、21世紀になって以降、共産党の方針ではなくなります。たとえば、2001年4月13日に政策委員会と国際局の連名で出された論文は、「サンフランシスコ条約の千島関連条項を日ロ交渉の不動の前提としないこと」というような表現に変わっています。そして、「廃棄」という方針をとらない理由として、次のようにのべています。

 「サンフランシスコ条約の個々の条項に明記された内容がその後、条文の公式な取り消しなしに、実際に変更された事例はあります。たとえばアメリカは沖縄の施政権を確保しましたが、1970年代はじめに、米軍基地の問題は残されたものの、施政権は返還されました。沖縄の祖国復帰が沖縄県民をはじめとする国民的な強い要求と運動によってかちとられたことは、周知のとおりです。」

 サンフランシスコ条約は、千島を放棄した2条C項では、「すべての権利、権原」を放棄するとして、千島の主権そのものを放棄しています。一方、沖縄については、「行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部」をアメリカがにぎると書いているだけで(第3条)、主権の問題は明示していません。だから「潜在主権」は日本にあるという解釈も出てきたわけですが、いずれにせよ両者には大きな違いがあります。ですから、両者を一緒にしていいのかという問題はあるわけですが、とにかく「廃棄」方針はとらないことになったのです。

 この方針が出る直前、党首だった不破さんが自著で、沖縄のことを例に挙げて、「廃棄」という方針をとらないと表明されたのです。「廃棄」でなく「立ち枯れ」にするのだということでした。本では「立ち枯れ」でいいでしょうが、政策の用語ではないので、上記のような表現になったのだと思います。

 ところが、それから15年が経ち、先月に出された新しい見解では、再び「廃棄」という言葉が使われています。「「サ条約」の千島関連条項を廃棄・無効化」ということでした。

 この「廃棄」が何を意味しているのか、かつての方針への先祖返りなのか、よく分かりません。「廃棄」という伝統のある言葉を使っているので、普通なら元に戻ったということになるでしょうが、その理由の説明のなかでは、「廃棄」方針を取り下げたときと同じく、条約が変わらないのに沖縄が返還されたことをあげており、条約は変えないままというようにも思えるからです(なお、先ほど説明したように、3条が沖縄の「主権」を否定したというものではありません)。

 「いったん結んだ条約を廃棄・無効化することは、決して不可能ではない。サンフランシスコ平和条約についても、第3条は、沖縄に対する日本の主権を否定しており、廃棄の手続きはとられていないが、この条約の壁を超えて、沖縄の本土復帰は現実のものとなっている。いったん結んだ条約であっても、そのなかに国際的な民主主義の道理にてらして問題点があれば、それを是正することはできるのである。」

 北方領土をどうしたら取り戻せるのかは、政府だけでなく、日本の政治勢力のすべてにとって、かなりやっかいな問題なんですね。何か不動の正しい方針があるという前提ではなく、現実をふまえた柔軟な対応が求められると感じます。

2016年11月1日

 北方領土返還の根拠を「領土不拡大」が第二次大戦の終戦処理の原則だったはずだとすることにおくのは意味のあることです。しかし、昨日見たように、ソ連側は「自分はそれに縛られないよ」ということになるわけです。

 ただ、当時のソ連が、相当にひどいことをやったという認識は、現在のロシア政府も共有できると思います。戦後、ドイツの領土を奪い、1100万人を強制的に移住させるにいたったことについては、ソ連がドイツに侵略され、2000万人の命を奪われた現実から説明できるにしても、日本との間ではそういうことはなかったのですから。

 ソ連は逆に、日本から攻撃もされていないのに、日ソ中立条約をふみにじって参戦し、満州に住んでいた多数の日本人の命を奪い、シベリアに抑留して過酷な労働に従事させました。スターリンは、革命後の日本によるシベリア出兵の報復と位置づけていたようだが、そんな論理が通るものでないことは、いまのロシア政府だって理解できるはずです。

 実際、ずっと停滞していた領土交渉が動き始めたのは、エリツィン政権ができてからですが、ロシアが「解決済み」の態度を変更した背景には、スターリンの無法を清算するという考えがありました。当時、エリツィン大統領政権の国務長官のゲンナジー・ブルブリスは次のように語っています。

 「北方四島はスターリン主義のもとで、日本から盗んだ領土です。共産主義から絶縁し、『スターリン主義の残滓』と決別しようとしているロシアにとって、北方四島を日本に返すことがロシアの国益に適っている。なぜなら、北方四島を日本に返還することによって、対外的にロシアが正義を回復したと国際社会から認知されるからだ。たとえ日本人がいらないといっても、返さなければならないというのがロシア人としての正しい歴史観です」(鈴木宗男・佐藤優『北方領土特命交渉』)

 領土交渉で鈴木さんや佐藤さんがこのような立場を主張し、ロシア側もこの引用のような態度を表明するようになったというわけです。ここにも日本共産党の領土政策の影響を見て取ることができます。

 ただ、これは四半世紀も前のことです。その後のロシアでは、スターリン主義の清算どころか、ソ連を大国にしたスターリンを賛美する風潮も見られるようです。そのなかで、スターリンの誤りの清算を背景に交渉しても、当時と同じような効果はないかもしれません。

 しかも、ロシアのブルブリスさんや日本の鈴木さんが言っている「スターリン主義」とは、共産党が言っている「スターリン主義」とは異なり、「共産主義」そのもののことです。社会主義の言葉は通用しないが、社会主義を否定する言葉では両国が相通じるというなかで、少し領土問題が動いたわけです。

 私は、現在の領土交渉を進める上で、スターリン主義の清算を迫る見地は大事だと思います。いまの日本政府は、90年代初頭の鈴木さんや佐藤さんの時代と異なり、原理原則を主張していないように見えるからです。

 しかし、現実政治の世界においては、スターリン主義の清算は、全く違った意味になるのですね。複雑な問題です。(続)