2016年11月4日

 で、結局、どうすればいいのか。私の考え方は以下の通り。

 領土不拡大が第二次大戦の戦後処理にあたって連合国の原則だったというのは、なかなかロシアには当てはまらないので、そう簡単ではありません。しかし、北方領土のロシアへの編入というのがスターリンの横暴だったということで、ロシア側を攻めていくことは大事なことです。

 やはり、ドイツとの戦争で2000万人の命が奪われた代償として欧州での領土変更があったことは、欧州諸国も納得せざるを得ない面があったわけです。1100万人のドイツ人が住む土地を奪われるのは仕方ないみたいな受け止めがあった。

 だけど、日本との関係では一片の道理もなかったことは明白です。そういう主張は実際には、スターリンの横暴にとどまるのではなく、社会主義時代の横暴を印象づける結果にになっていくんでしょうが、攻め手はここにあるのです。この間、共産党の小池さんが、「原則で攻めないと4島も返ってこない」として、4島返還に含みを持たせたみたいな発言をしておられますが、4島のためにも原則的な攻め方は大事だと思います。

 90年代初頭、鈴木宗男さんや佐藤優さんが交渉を担っていたときは、そういうアプローチだったわけです。全千島を放棄するサンフランシスコ条約を前提にして交渉したのに、千島に属する国後、択捉の問題が交渉議題となったのは、驚くべき結果でした。

 それで少し動いた。だけど、現在の安倍政権は、ロシアをどう攻めるかということを抜きにして、どう経済援助でその気にさせるかという思考しかないようです。これでは、相手に足元を見られてどうにもなりません。

 同時にその上で、90年代に実際に日ロ交渉が開始され、いろいろな到達点があるわけですから、それを無視することはあり得ないでしょう。日ロの合意として領土問題とは4島の問題だということは合意されているので、いまさら全千島の問題だといったら、外交交渉は成り立ちません。

 国後と択捉を放棄したサンフランシスコ条約が前提で交渉しているわけですから、その国後と択捉に住んでいた方々の権利をどこまで保障できるのか。実際には、それが焦点となっていくでしょうね。そういう人の権利を踏みにじるような決着だと、安倍さんにとって向かい風が吹くことになると思います。

 しかし、安倍さん、ロシアに食い逃げされそうな報道も多いですね。向かい風どころか、台風になる可能性もあります。おカネで解決するというやり方では、解散総選挙なんて、やはりあり得ない感じがします。

 わあ、『「日本会議史観」の乗り越え方』について、芝原拓自先生から激励のお手紙を頂いちゃった。ということで、来週はそのあたりの話題を。